■2025年10/12。
う~む。
こういうのを何と表現するんだろう。
因果応報? それとも、急がば回れ?
ずっと探していた北上さん関連書籍の話です。
北上さんが編集協力をしていた
集英社創業90周年記念企画
「冒険の森へ 傑作小説大全シリーズ全20巻」のうちの
『9 個人と国家』であります。
ずっと以前、新刊書店で見かけて、
「冒険小説関連の叢書シリーズってことは、
北上さんが関わっているのかも」
欲しい、とは思いつつ、一冊一冊が極太。
20冊置く場所が無いわな……と思って、見ぬふりをしておりました。
が、北上さんの解説文庫制覇に挑戦し始める中、
北上さんの他のお仕事や掲載誌なども集め始めていたら
「本当に北上さんが携わっているかも」
と気になり出し、ネットなどで調べたら、これが的中。
ほぼ同時期に発行されていた集英社創業85周年企画の叢書
『戦争×文学』全20巻+別巻1
も北上さんが編集協力をしていて、
「重なってしまって、重複を避けるため収録を断念した」
という趣旨のコメントしているのを読み、
「ああ、やっぱり関わっていたんだ」
と分かった次第。
■そして『冒険の森へ』について
「関わっている以上、どこかの巻で北上さん、解説を書いているのでは?」
と調べたところ、案の定ヒット!
Amazonだったか……書籍内容欄の所に北上さんの名前が!
それが『9巻 個人と国家』だったという次第であります。
まあ、2015年に出版されて、割と最近だから、簡単に手に入るだろうと
高をくくっていました。
が。
これが難関本だったんですなー。
あ、何度も言いますが、僕、なるべく店頭で買いたい、という主義でして。
なので、まずは新刊書店、ジュンク堂など叢書シリーズを置いていそうな
大型書店を見て回ったんですが……無い。
(『戦争×文学』シリーズはあったのに。やはり、冒険小説系は今なお肩身が狭いのか。
ちなみに北上さん、こちらのシリーズでは、解説や解題は書いていない模様)
そこで、「@ワンダー」に行きました。
が。
惜しい! さすが名店だけに、叢書は置いてあったけど、
「9巻」だけが欠落。そんな……前後はあってこの巻だけ中抜けって。
~~てな具合に、ミステリ系古書店も回りました。
もちろん「ブックオフ」の単行本コーナーもチェックしまくりました。
そうそう!
「ブックオフ国領店」は穴場ですよ。
確か、南大沢の古本祭りへ行く途中で立ち寄ったんだったか。
ここは、都築道夫、平井和正などの古めの文庫を見かけます。
こちらにも『冒険の森へ』が複数並んでいるのを発見!
が、またしても「9巻」の姿は無し……落胆。
■で、悩んだんです。
もう、ネットで買っちゃう?
「北上さん解説文庫リストに無い作品」は原則、店頭で入手に
こだわってきたけど(誰も強制しとらんのに)、
これは、単行本やし。
それに「解説」じゃなく「解題」やし。
そうなんです。実は改めて調べたところ
「冒険の森へ9巻 個人と国家」の内容を調べると
「解説 北上次郎」ではなく「解題 北上次郎」となっていました。
「解題」って何?
検索してみると……
「作品の著者や内容、成立の経緯、他に及ぼした影響などについて
解説すること」
どうやら「解説」は個別の作品について書くことで、
「解題」は、より大局的な見地で成立経緯などを書く、ということらしい。
まあ、北上さんはシリーズ叢書全体に携わった立場として、
俯瞰的にシリーズの意義を記すということでありましょう。
■で、結局、ズルしました!
ネットで買いましたすいませんポチりましたすいません。
「。」も打たないくらい、いち早く謝ります。
まあね、早く確認したかった。その一点です。
なにしろ、半年以上は探しましたから。
以前、書いたことがあるかもしれませんが、こうした中途半端に新しい本って
出回りにくいのかな、というのが実感です。
大島真寿美『戦友の恋』角川文庫も、
2012年と比較的新しい作品なのに、
新刊書店でも、古書店でも、「ブックオフ」でも見つかりませんでした。
個人的推理ですが、
新刊書店の店頭で動きが無くなり、出版社の補充在庫も無くなる、
新作が動かないから新作リサイクルで稼ぐ「ブックオフ」に出回らない。
一般古書店では、まだ新しすぎて、並べても高値にならない。
エアポケット作品となる……
~~ということなのかなあと。
■で、2025年10月。
amazonで買ってしまいましたごめんなさい8日に届きましたごめんなさい。
読みづらいね。
で、確認したところ、やはり「解説」ではなく「解題」として
北上さんは書いていました。
が!
問題はその4日後の10/12……
と冒頭に戻るわけです。
僕は、メールを見て呆然としてしまいました。
なんと、
「ブックオフ」から「『冒険の森へ9』が入荷しました」
との通知が届いたんです。
いわゆる、取り寄せシステム。
自分の都合のいい店舗で受け取れるので、僕は一応「店頭購入」と位置付けて
活用しております。
(このシステムを使わなかったら、
吉野朔実『お父さんは時代小説が好き』角川文庫 は、
絶対店頭では見つからなかったです。今なお何処でも目撃皆無)
諦めてズルしてネットで購入して、わずか4日後に見つかるなんて。
(ついでに言うと、その後、25年年末には
「ブックオフPLUS 大宮ラクーン店」でも見つけました……とほほ)
こういうのを何と言うんでしょう。
急がば回れ、ということなのか。
ズルした自分への天罰なのか……
ひたすら反省させられた出来事でした。
■そんな反省より「解題」の内容ですよね。
「解題/それでも国境は存在する」と題し、
上下二段、7ページにわたって、いやー、みっちりだわ。
収録された掌編4編、短編六編、長編二編について丁寧に触れています。
巻頭を飾るのは、吉行淳之介『鮭ぞうすい製造法』。
タイトルからすると、とても冒険小説とは思えん。
しかも内容は、妻の作った鮭雑炊に納得がいかず、夫が作り方を教える、
という、のどかそうなお話。
どうして冒険なのか?
北上さんは、これを巻頭に置いた意図、として、雑炊の作り方の一節を紹介。
「まず、ビルの地下室の小部屋に、鮭の缶詰をぎっしり詰め込む。
次に、爆撃機でその上空から焼夷弾を一山落とす……」
ん? 鮭雑炊で爆撃機? 何とも不似合いな。どういうこと?
北上さん曰く、
「空襲で焼け野原になった東京の、
小学校の地下室にあった大量の鮭缶を食べたときの記憶が夫にあり、
そのときの缶詰で作った鮭雑炊を
ふたたび食べたくなったというわけだ」
なるほど。
鮭雑炊の思い出から、国家に翻弄された個人、
戦中戦後を必死で生き延びた夫の過酷な体験が浮かび上がる……ということか。
確かに「冒険小説 個人と国家」のテーマに重なります。
という風に、12編について、丁寧に内容を紹介しつつ、収録意図を
記している北上さん。
■その中で、一番印象に残ったのが
胡桃沢耕史の長編『ぼくの小さな祖国』についての解題。
他の作品が長くて1ページほどの紹介なのに対し、
「まったくヘンな作家がいたものだ」
として、実に2ページも熱く語っているんです。
しかも、掲載作ではなく『ロン・コン』という初期作の話からスタート。
(ある意味、北上節ですけど)
65歳の畳屋のご隠居が、町内会の旅行で行ったラオス国境でドンパチに
巻き込まれるというお話だそうで
「とにかくヘンなのである。
ところが、読み終わると体が軽くなるような、
気持ちのいい風が行間に吹きわたっている。
なんだ、これは?」
いや、こちらが聞きたいです。
掲載作じゃない話で「なんだこれは」と言われても(笑)
まあ、これが北上さんの上手さなんですよねぇ。
『翔んでる警視』シリーズのユーモア推理の人、というイメージが間違いなく
覆されますもん。
この後、胡桃沢耕史のデビュー経緯や、
『六十年目の密使』『天山を超えて』という、
これまた掲載されてない作品への熱弁が続き(笑)、
その挙句、
「この『天山を越えて』を私はいまでもいちばん愛している」
とおっしゃる!
幸い、これは北上さんの解説文庫作品なので、僕は持ってましたが、
持ってない読者にはヘビの生殺しでは?(笑)
とはいえ、最後に、
じゃあなぜ『天山を越えて』ではなく『ぼくの小さな祖国』を収録したのか?
~~についての鋭い理由も、しっかり記しています。
それは是非、本を読んでいただいて。
いずれにせよ。
胡桃沢耕史の初期作品、読みたくなることは間違いなしです。
だって僕、その後、古書店であれこれ買いましたもん。
★注! 『天山を越えて』北上さん解説を読んでビックリ!
「まったくヘンな作家がいたものだ」
『冒険の森へ』の胡桃沢耕史紹介と同じ書き出し!
北上さんの“数十年の時を超えた遊び心”が感じられて、
読み比べても面白いですよ!






