■まだ、W杯疲れで体が鉛のように重いっス……

なので、更新は不定期になりがちですが、お許しをば。

 

さて、2025年11/21、自宅の本棚に眠っていた

文春ムック『西村京太郎の推理世界』に北上さんの名前を見つけた件。

“寄稿”と書かなかったのは“座談会”の参加なので。

「目次で読む『オール讀物』と推理小説の90年」

 

という企画で、

1000号を超える目次を見つつ、

その中に占める西村京太郎さんの足跡を振り返る、というコンセプトの様子。

作家・北村薫さんと、東京創元社で新本格ムーブメントを作った元社長、

戸川安宣さん、そして北上さんの3人。

北上さんはリモートでの参加の様子。

 

前回は腱鞘炎で途中で断念したので、今日はその続き。

一応、手首の痛みは消えました。

あ、誰も心配してないですか? そうですか……

 

■さて、北上さんは、どんな話をしているのか? チェックしてみますと……

北上さんは高校生だった昭和37年ごろから毎月『オール讀物』を

チェックしていたそうな。

確かに、中間小説誌の愛読者だった、と各所で書いてますもんね

 

「野坂昭如や五木寛之の登場した頃で、友人との間で

「今月の五木寛之はどうだ」なんて話が出るもんで、

  小説誌を読んでいないと話にならなかった。

 当時はとにかく小説誌が面白くて、毎月

 『オール讀物』『小説新潮』『小説現代』の三誌を読んでましたね。」

 

という北上さんの第一声から座談会は始まります。

へー、そうだったんだ。

今は、雑誌がドンドンなくなって、本の情報マガジン『ダ・ヴィンチ』も

26年11月号をもって休刊することに。

書評誌の最後の砦、北上さんの作った『本の雑誌』だけは、

応援し続けねば、と改めて決意しておりますが、

小説誌が売れに売れていた時代があるんですなー。

 

そして、座談会のイントロでは、創刊号に野村胡堂の「銭形平次」第一作が

載った、なんて貴重な話が語られてます。

この辺は、もっぱら博識な北村さんや戸川さんが話している形。

この間、実に5ページ分くらい、ほとんど北上さん喋ってない(笑)

『オール讀物』も昔は、ミッキー・スピレインやハロルド・ロビンスという

翻訳ものを載せていた、なんて話を差し込むくらい。

 

■と、思いきや! 

昭和30年代「初のハードボイルド」というテーマに入るやいなや、

俄然、饒舌になります(笑)

北上さんは昭和37年10月号に注目。

この年、「推理小説新人賞」が新設され、最終候補となった作品、

北見氷太郎『償いは鉛で』が掲載されたそうで、

 

「目次の左トップ、しかもオールの目次に初めて

 「ハード・ボイルド」

 という見出しが付いた作品なので、おやっ、と思って読んでみました」

「昭和37年という年は、大藪春彦のデビュー作『野獣死すべし』の四年後、

 河野典生のデビュー作『陽光の下、若者は死ぬ』の二年後。

 国産ハードボイルドが書かれ始めたばかりの黎明期に

 「ハードボイルド」の看板を掲げてデビューした新人がいたのかと

 注目したわけです」

 

~~などと語り続けること30行分! ほぼ独演会状態! 熱すぎ!

これ座談会ですよ~(笑)

そして北上さんによると、その翌年

 

「第二回の推理新人賞で出てくるのが、

 西村京太郎『歪んだ朝』。

 当時、高校生でしたが、これは私、リアルタイムで読んだのを覚えてますね」

「新しい時代の作家が登場したと感じました。

 私は本格ものが苦手で、

 積極的にはミステリーに近づいていなかったんですが、

 西村作品って、ミステリーというよりも、

 何か“新しい小説”という感じがした

 

本当に面白い小説じゃないと書評も解説も引き受けなかった北上さん。

“新しい小説”とまで言うのはよっぽどのことなのでは。

新時代の到来を感じさせる作家を見つけた! という興奮が伝わってきます。

新しい作家を人より先に発見して、仲間や後輩に

「○○って知ってる? 凄いぜ」

と自慢するのが好きだったと聞く北上さん。

もしかして、その原点の一つが西村京太郎さんだったのかもなー。

 

そして、以前、別の項でも紹介したように

 

「デビュー後しばらくすると、西村さんのミステリーから、

 “犯人が消えはじめる”んですよ。

 つまり、趣向とか仕掛けが大きくなるのに対して、犯人の影が薄くなり、

 動機なども刑事が推理するだけ。」

 

と、トラベルミステリー前の西村作品の独自性について解説。

西村京太郎の凄みについてどんな話をしているのか?

……詳しくは読んで頂いて。

 

■そして、昭和40年代。

一大推理小説ブームの時代ですが、北上さんが注目したのは、

推理小説から離れていった2人の作家と、SF作家。

この我が道を行く感。さすがです(笑)

 

そして注目した一人は、昭和44年の推理新人賞、加藤薫

何でこの人に注目? あ、山岳ミステリーだったんだ。

北上さん、夢枕獏さんに山岳小説を書かせたように、

山岳小説大好きですもんねー。

で、ここでも、うわー語っとる。北上さんの熱弁が今度は50行以上!

北村さんの短い相槌を挟んで、怒涛のように語っとります!(笑)

ちなみに、加藤薫はその後ミステリーを離れ、

『ひとつの山』という青春山岳小説の傑作を書いて筆を折ってしまったそうな。

うう、そう聞くと読みたくなる……

また、探す本が増えたじゃないですか。罪な書評家ですな。

 

そして、北上さんが注目した二人目が

ミステリーを離れてしまったもう一人の作家、西村寿行

 

「デビュー直後は社会派ミステリーを書いていたんですよ。

『安楽死』は昭和49年の日本推理作家協会賞の候補にもなったけれど、

 小松左京『日本沈没』が受賞して、西村さんは賞を逃す。

 それで彼はミステリーから足を洗って、違う方向へ行っちゃうんですね」

 

へー、そうだったんだ。

そこから、北上さんを興奮させた西村寿行の『冒険小説宣言』へとつながるわけですな。

なるほどー。勉強になるわー。

 

さらに、北上さんが愛したSF作家・広瀬正についても

熱く語り続けていて、

司馬遼太郎や大佛次郎という大家とのエピソードも披露。

驚くことばかりなので、

その辺も是非、『西村京太郎の推理世界』を入手して読んで頂いて!

 

最後のページを見ると、あ、これ、

『オール讀物』2021年7月号に掲載された座談会を

このムックに再収録したものなんだ。

コロナ禍でリモート参加だったのかな。

でも、リモートってなかなかトークに入り込みづらいものですが、その中で、

ほとばしるような喋りっぷり!

さすが北上さん、と感じた座談会でした。