■2025年10/14。

いやあ、まさかこんな所にも参戦しているとは、北上さん。

「色々な作家名+解説北上次郎」

で検索している中、ふと、思ったんですよね。

 

北上さん、クーンツ好きだったな。

『ウィスパーズ』『ライトニング(新版)』に解説を書いて、

『コンプリート・ディーン・クーンツ』に評論を寄せているのなら、

スティーブン・キングは?

という考えが浮かんだんです。

ホント、気まぐれ。

 

で、試しに

「スティーブン・キング 解説北上次郎」

で検索してみたら、

これがまさかのヒット!

『増補改訂新装版 コンプリート スティーブン・キング』

に北上さんの名前が!

うそ!?

北上さん、クーンツ派でキングはお好みじゃなかったはず……

逆に気になりません?

ガイドブックだから、捜索している「解説」ではないにしても、

何を書いているのか、手に入れて、読んでみなくては!

 

■ということで、二股検索してみました。

あ、二股検索っていうのは

「日本の古本屋」や「Amazon」で、

ネットに出品しつつ店頭と併売している古書店を探しつつ、

「ブックオフ」でも探し、「店舗取り寄せ」も可能かを探る、という

小ズルい作戦。

そしたら……おおっ!

どっちもあった!

Anazonでは阿佐ヶ谷の古書店「銀星舎」さん。(今はもう無いみたい)

そして「ブックオフ」でも在庫ありで「取り寄せ可能」。

悩んだ挙句、ブックオフ取り寄せにしました。

実はこの時、別のミステリー小説を取り寄せていたので、

一緒に取りに行こう、と。

 

■そして、無事入手!

1988に出版された原典に、追加情報や新資料などを加えて

1991年に出されたもののよう。

いや、デカい、分厚い!

高さは普通の単行本より頭一つくらい抜けた21.5cm、

厚みは4cm弱。

実に480ページで、持ち歩いて読む読書向きではなさそうです(笑)

91年刊行なので取り扱っている作品は

『ザ・スタンド』くらいまで。

 

中身は……

▼キング小伝

▼作家論……ここに北上さんも寄稿してます。

▼作者インタビュー

▼作品解説・小説編

~~だけでなく

▼作品解説・映画編 

~~も入っているのが、さすが映画化作品の多いキングのガイド本。

そのほかに

▼資料編 

~~として、作品の重要地名図、とかミュージカル「キャリー」、

さらには「タビサ夫人の諸作品」まで!

いやあ、すごいわ。

 

■それはさておき、北上さんの「作家論」ですよ。

キング派じゃない北上さんが、なんだって寄稿しているのか?

何を書いてるのか?

すると冒頭、いきなり、かまします。

 

「スティーブン・キングなんてこわくない、というのが最初の印象だった」

 

おお、そう来たか。

まあ、これは各所で書いていたことではあります。

そして、なぜ怖くないのかについて6行で理由を解き明かしていて、

「ああ、なるほど」と思う人も多いはずなので、ぜひ、ご一読を。

あ、誤解されないよう言っておくと、

北上さんはキングを否定しているわけではなく、

各作品を読み込んでいて、その上で

 

「『こわくないけど、うまい』と付け加えなければならない」

 

というスタンス。読ませる作家として、しっかり認めているんです。

 

ちなみに言っておくと、僕はキングは好き。

『悪霊の島』はゾクゾクしたし、『IT』なんか特に夢中になったなぁ。

そして僕は怖かった(笑)

 

さて、怖くない理由を解き明かして、

あとは、認めている「うまさ」について語っていくのかなぁ……と思ったんですよ。

だって、「キング好き」向けに出す本ですから。

どっこい、北上さんは違います。

キング作品への不満を2つ挙げます。

まだ、続けるんか。

度胸あるわぁ。

 

①恐怖小説としての不満

 

まあ、これは、先ほど書いていたことですね。

で二つ目は…

 

②SFとしての不満

 

『バトルランナー』から、

『キャリー』『デッド・ゾーン』『ファイアスターター』などの

SF系作品についても、展開に不満を述べてます。

そこで、ある日本のSF作家の名を挙げているんですが、

それもまた読んで頂いて。

 

この辺で矛を収める……と思いきや、まだ続きます!

 

「実は、クーンツに対するキング・ファンの冷ややかな目に腹を立てていたのだ」

 

と、突然、当時激推ししていたクーンツの話に急展開しちゃうんです!

クーンツは70年代と80年代では別の作家かと思うほど

作品の出来に違いがあるのを認めた上で、

 

「私の好きな『戦慄のシャドウファイア』はまったく無視されているのだ。

 これが納得しがたい」

 

と、ぶち上げる。

そんな、北上さん。

ここ、キング・ファンの縄張りですよ。

そして

 

「で、とりあえず、クーンツの話になる」

 

ええ!?

で、ホントにここから、実に25行にわたって、

クーンツ論を語り始めちゃうのであります。

マジか?(笑)

しかもその挙句、

 

「何が言いたいのか」

 

いや、こっちが聞きたいですわ!

読んでてハラハラしてきた。

でもね、その25行を読むと、

キングとクーンツはモダンホラーに分類されているが、

クーンツは実は違うジャンルの作家だ、という主旨で、

それはキングもクーンツも好きな人には、納得できる内容でもあるんです。

(その論旨の展開もまた楽しいので、読んで頂いて)

 

そして、北上さん「何が言いたいのか」というと…

 

「本日ただいまより、少なくてもクーンツを語る時に、

 キングを引き合いに出さないでもらいたいのだ」

 

「キングに比してクーンツは、という言い方は、

 三島由紀夫に比較して西村京太郎の作品には思想がない、

 という言い方に等しい」

 

と、比喩として、なぜか全く関係ない作家の名前が。

自分でも気づいたのか、

 

「なんだか話がずれてきた」

 

ともう、ここで吹き出しました。

いやもう、おもろいわぁ。

キング論として依頼された原稿で、「こわくない」と主張し、

「クーンツ論」を展開した挙句、最後のページ、残り10行になって、

「なんだか話がずれてきた」って!

いや冒頭から、ずれてたじゃん!(笑)

 

そして最後に、もう一度、同じお願いを訴えて終わります。

 

「(キングが)ムーブメントを起こすだけの力量を

 持っている作家であることは認めよう。

 しかし、クーンツを語る時に

 キングを持ち出すのだけはやめていただきたい。

 それがクーンツ断然擁護派からのお願いである」

 

いやー、楽しかった。

ホラーの帝王キング論の本で、まさか笑わされるとは。

なんて思いつつ、改めて読み直すと……

 

そうか、これ、北上さん流に嚙み砕いた、

「キングとクーンツの作品比較論」なんだと気づきました。

キングが世界的に称賛される中、

クーンツに対する目は冷ややかだ、という僻みっぽい目線で書き、

コミカルに展開してるけど、

実は……

キングは、バックマン名義の頃から進化していること、

リアリティ確保のための書き込みなど細部が群を抜いてうまいこと、も

ちゃんと伝えてる。

一方、クーンツは、

『雷鳴の館』など、そんなバカな、というオチだけど、

そこまで読ませるテクニックは見事で、評価すべきだ、という目線。

作家論、と感じさせず、「読み物」として楽しませちゃう。

いやあ、名人芸。

 

そしてこの作家論を掲載してくれた編者の懐の深さにも感謝です。