■さて、では、北上さんの解説文庫捜索で残されていた最後の一作

ヒュー・ハウイー『シフト』角川文庫。

北上さんはどんな解説を書いていたのか?

その冒頭は……

 

「本書の前作『ウール』はホント、面白かった。

 しかし最初に書いておくが、数百年後の未来を舞台にした物語とはいっても、

 SFだから手に取ったわけではない。

 本書を手にとって、なんだよSFかよ、と言う人がいるかもしれないので

 書いておく」

 

と始まる。

なるほど、確かにSF、というだけで拒否反応を示す人はいるもんな。

実は北上さんもその一人のようで、

 

「実は私、SFをほとんど読んでいない」

 

と明かし、1970年代に始まったニューウェーブSFを読んで

 

「まったくわからなかった」

 

~~ため、SFを読むのをやめよう、と足を洗ったのだそうな。

以来そのまま、SF読者に復帰できずにいる、と記しています。

 

つまり、今回、ヒュー・ハウイーのシリーズを手に取ったのは

SFだからではない。

解説を引き受けたのは、ジャンルとしてはSFだけど、

最新SFが全くわからない自分でも本当に楽しめたから。

どうか、安心して読んで欲しい、と、

冒頭でメッセージを伝えてくれているわけです。

ありがたや。

そう言われると安心します。

何しろ、世界的ベストセラーとなった『三体』ですら

「分かんなかったら、どうしよう」

と迷いに迷った人間なので。

北上さん、助かります。

 

■さて、ではヒュー・ハウイーの三部作

『ウール』『シフト』『ダスト』はどんな作品かというと……

舞台は数百年後の未来。

地球は荒廃し、空気が汚染されているため、人類は「サイロ」と呼ぶ地下世界で暮らしています。

地上に出るのは外を映し出すレンズを磨く時のみ。

その「清掃人」に選ばれるのは、地下世界の法律に背いた犯罪者や反逆者で、

防護服を着用させられ、毛織(ウール)を持たされて外に出される。

だが、いまだかつて「清掃人」が帰って来たことはない……

 

北上さんはその地下世界と清掃人の設定をちらっと聞いただけで

 

「えっ、何それ? と面白本を捜すアンテナが早くもここで動きだす」

 

と惹き付けられ、

ヒロインの保安官ジュリエットが逮捕され、

「清掃」の刑に処せられてしまう、というストーリーを紹介し

 

「ね、面白そうでしょう?」

 

ともう、夢中であります(笑)

SF、卒業してたんじゃなかったんか?(笑)

でも、僕も、ここまででもう「読みたい!」となりました。

 

そしていよいよ解説の本題、第二部『シフト』の話へ。

 

「というわけど、お待ちかね、その『ウール』に続く

 第二部『シフト』のお目見えだ」

 

おお! 頼みます北上さん!見どころを教えてください。

……と思いきや

 

「その内容を紹介する前に、ディストピア小説について

 少しだけ書いておきたい」

 

と脱線。

来ました。得意技です(笑)。

でも、ここで紹介されるディストピア小説の名作、ブライアン・オールディスの

『グレイベアド 子供のいない惑星』創元SF文庫が、

なんとも、魅力的なんです。

シリーズ三部作、全6冊あるのに、その解説で、

また違う作家の作品への撒き餌……うう、底なしの北上沼や。

北上さん解説ならではの、エンドレス読書の罠(笑)。

『グレイベアド 子供のいない惑星』について、どのように紹介しているかは

実際に手にして読んで頂いて。

 

『シフト』の解説に戻った北上さん。

 

「これが紹介しづらい」

 

として、世界終末前の時代と、終末後の時代が入り乱れ、

どうして「サイロ」という地下世界が造られたのか、秘密が明かされていく

ことだけを紹介。

 

「読書の興を削がないようにするにはこれくらいにしたほうがいい。

 あとは何を書いてもネタばれになりそうだ」

 

SFに興味のない読者もたっぷりと堪能できると断言。

僕は、北上さんがその一例として紹介した一節にツカまれました。

 

「たとえば本書には、どこにとは書かないが、猫と少年が登場する。

 その交流が微笑ましいこと」

 

うーむ! 猫が出るのか。

買いだな!

最近、夜中に目が覚めて、子猫動画を見ているヤバい自分。

これだけで、6冊読むという決断が出来ました(笑)

 

とにかく、これで一応、

書店で見つけた一枚のリストから始まった、

2年数か月にわたる

「北上次郎さん解説文庫リスト」作品の捜索、

コンプリートです!!

持ってない本リストなどを書き込んだメモ帳も

随分と年季が入りましたねー(笑)

これを片手に、古書店の書棚を目を皿のようにして、一体何軒見て回ったことか。

仙台から、土浦、房総半島、八王子の奥の高尾方面、

静岡、名古屋、京都、大阪……

今はもう、無い古書店もあります。

これにてミッション完了! 

……と思ったのですが。

まだまだ知られざる北上さん解説作品(文庫含む)が見つかったので、

このブログ、もうちょっと続けさせてください。

って、読者さんもおらんから、誰に断る必要も無いか(笑)