民法総則③ | 温故知新

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星乃みれい☆加藤香織
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問題


詐欺による意思表示の取消は善意の第三者に対抗することができないとされている(96条3項)のに対し、要素の錯誤による意思表示の無効の場合には同様の規定がないのはなぜか説明しなさい。



解説


要素の錯誤のある意思表示について、96条3項のような規定がなく、意思表示の無効を善意の第三者に対抗できるのは、効果意思が欠けているからである。




つまり、要素の錯誤のある意思表示は効果意思が欠けているため、錯誤を知らない第三者が、錯誤による意思表示を前提に法律関係に入ったとしても、私的自治の観点から意思表示は無効とすべきだからである。



これに対して、詐欺による意思表示について、善意の第三者に対抗できない旨の規定があるのは、一応効果意思があるからである。


つまり、詐欺による意思表示を取り消した場合には遡及的無効(121条本文)により、第三者も保護されないのが原則である。


しかし、善意の第三者に対しても遡及的無効を主張できるとすると、取引の安全を害する。

そこで、96条3項は、善意の第三者に対しては取消の遡及効を制限したのである。

錯誤と異なり、一定の場合に遡及効を制限したのは、詐欺による意思表示には、一応効果意思があり、一定の場合に遡及効を制限しても、必ずしも私的自治に反しないからである。



したがって、両者の違いも、錯誤は効果意思が欠けているが、詐欺には一応効果意思があることにより生じると解される。