「まったく…なんやねん」
柏木は一人残された森の中で呟いた。
楠田が残したアイコンタクトはなんだったのだろうか。
まあ、おおよその予想はつくが…、あっているんだろうか?
「どんだけ昔から一緒におったっつっても、…流石にあれは分からんぞ」
はあっと柏木はため息をつき、一端塔へともどることにした。
(塔は、彼等が住んでいる家の様なもの。)
―――アイツのディスプレイに確か…
アイツの考えることはたいてい情報に関したものだ。
アイツお手製パソコンになにか入っているのだろう。
動画か?写真か?
・・・・すくなくとも、ろくなもんではないやろうな…
――――――――――――――――――――――――――――
辰平は見事に軽やかに森の中を駆け抜けていた。
柚子葉たちを掴んだままだが、そんなに影響は出ない。
彼らはそれでも金魚のフンみたいにひっつきまわしてくる。
「あーもー、めんどくせ!」
流石に息も上がる。
「…ねえ!楠田!」
「…おい柚子葉!俺のこと呼び捨てにすんじゃねーよ!」
「嫌ね!アンタはきっと下等生物よ!!!こんなところに住んでいるんだもの!」
「なにそれ!?おじさんちょっと傷つくよ!?」
「勝手に傷ついてなさいよ!…というか、こんな話をするために大声出してるんじゃないの!!!」
走りながら話すのはキツイ。
それでも喋るのは、なにか重要な事かと推理する。
「なんだよ!」
「あなたのバディの関西弁の人いるでしょう!?」
「バディ!?あー、あいつ!?それがどうした!」
「彼、おいてきたけどよかったの!?」
「おお!!!アイツにはチョットしてもらうことがあるからな!だから置いてきてよかったんだよ!」
「そうなの!?っていうかそれ俗にいうパシリなんじゃないのかしら!?」
「俗にいうも何もねーよ!!!ただの頼みごと!!!」
彼らは大声を出しながら全速力で走っている。
それなのに時々表情に笑顔や怒りが見えて、疲れているようには見えない。
辰平はやっと話に節目がついたころ、後ろを振り返った。
アイツらはまだ追いかけている。
しかも彼らも疲れるどころか、寧ろ追いついているように見える。
彼らは人間じゃない。
悪魔だ。それなりの体力はあるだろうし、運動神経も良いだろう。
ただ俺は、人間なんだよ!!
仮に運動神経がよかろーが、体力があろーが、そんなものは悪魔に対して無意味だ。
ならどうすればいい!?
なら―――――――――
―――【何かの答えは きっと――――】
恩師の言葉だ
肝心なとこは思い出せねえけど。
何かの答えは、きっと―――…
つーか、それ思い出したところで悪魔に通用すんのか!?
しなくね!?いや、しねーよ!
あー、もう!なんでこうなったんだよ!
取り敢えず、俺は柏木の連絡を待つことにするか。
それまで、走り抜けるのみ!!!
体力、もつかねコレ!?
―――――――――――――――――
記憶の切れ端が明らかに不自然な形で切り取られている。
意味があるかもしれない、確証はないが、何故かそう思う。
昔の僕は、こんな小さな情報や過去なんて気付けなかった。
僕は、少しでも…ブライアンに~なれている~のだろうか?
人間の思いや、言葉などは嘘ばかりだ。
信じる価値もなくて
聞く価値もない。
だけれどきっと、彼には
【自分の命を捨ててまでも 娘を守り抜く】
…そんな、ルールがあったのだろう。
僕の中にはそんなルールなど存在しない
自分より大切なものなどはない
自分を犠牲にするのならば、100人死んでも構わないのだ。
…だから、そういう意味で、今僕は怯えている。
何者かに自分を見据えられたようで、覗かれたようで
とにかく、自分を壊しているような気がしてならない。
「どうして…ッ!」
どう叫んだってはじまらない
どう泣いたってはじまらない
終わりはない、始まりもないこの人生を
狂わしたのは誰だ
壊したのは誰だ?
削り取ったのは誰だ?
どれだけ自分が自分を大切にしているか、自分が一番わかってる。
怯えているのも怖がっているのも、手が震えているのも
乾いた眼が泪で溢れそうになっているのも
助けて
…なんていうつもりはないから
教えてほしい、今僕が知らない何かを
返してほしい、今僕が失くした何かを
つづく