阿闍梨餅 | メンズビギ マルイシティ横浜店 GM(ゼネラルマネージャー)の極私的ブログ

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役立つものからどうでもいい話まで、
GM(ゼネラルマネージャー)独自の視点で綴るブログ。

日頃からお土産や差し入れを
お客様から頂くことがよくある。
これはもう、感謝の一言に尽きる。

先月結婚式を挙げたばかりの中西の場合は
お土産のレベルを通り越し、
連日立て続けに豪華なブランド物の
結婚祝いを頂くなど、
彼のライフスタイルは
現在急速にラグジュアリー化している。

最近の私と仁田は、
彼を「ラグジュアリー中西」と呼び、
会話やLINEのやり取りの語尾にも必ず
“ラグジュアリー…”
を付けるようにしている。
サッパリ意味が分からないが…。



ところで…
先日は顧客のF様からスタッフへ
京都の銘菓「阿闍梨餅(あじゃりもち)」
を頂いた。

京都には美味しいお菓子が多いが、
その中でも満月の「阿闍梨餅」は、
和久傳の「西湖」や
出町ふたばの「豆餅」と並び、
私のお気に入りである。

餅粉を使った生地はしっとりしながら
なんとも言えないモチモチの食感で、
丹波大納言の粒餡を包み込んでいる。
大の粒餡派の私にはクセになる味だ。

F様を担当した中西は、

「袋に6個入ってるそうなので、
一人2個づつどうぞ、とのことです」

と言った。
一人2個づつ…と、ハッキリ。

早速私は仕事中にもかかわらず
店の裏にあるストックルームで一つ食べた。

「ウ~ン、旨い!
やっぱこれ、メチャクチャ旨いよ!」


さて…
残りのもう1個は
帰りの電車の中で食べようと
楽しみにしていた私は、
その日まんまとお店に忘れてきてしまった。
翌日は休みだったが、
確か賞味期限はまだ大丈夫だったはずだ。


翌々日…
店に出勤するなり仁田が、

「GMの阿闍梨餅が1個残ってますよ」

と言う。

当たり前だ!
そんなこと言われなくても分かっている。
名前こそ書いてないが、
その1個は紛れもなく
一昨日私が忘れて帰った阿闍梨餅だ。
オレの分に決まっているじゃないか!
今日はそれを楽しみにして来たのだ…

という心の声はおくびにも出さず、

「ああ、そうだったっけ? ありがとう」

と平静を装って言った。

すると仁田は、

「そういえば昨日中西さんが
1個残った阿闍梨餅を見て、
“あれぇ、GMはもういらないのかな…
どうしようかな… 食べちゃってもいいかな…”
って迷ってましたよ」

と言うではないか。

なんだと?
まさか裏でそんなストーリーがあったとは!

密かに楽しみにしていた阿闍梨餅が、
一つ間違えたら中西のお腹に
収まっていたかもしれないという事実に、
私は軽い衝撃を受けた。

油断も隙もあったもんではない。
私は日本の安全神話が崩壊する前に、
私の分 の阿闍梨餅を
すぐ食べることにした。

しかし、ただ食べるだけではツマラナイ。
私の心を波立たせた中西への仕返しに、
ある細工を施すことにした。

こういう時の私は、
自分でも恐ろしいくらい悪知恵が働く。

まず、包み紙の裏側から目立たぬよう
カッターで最小限の切り込みを入れ、
中身を取り出して食べる。
そして、空になった包み紙の中に
阿闍梨餅と同量のティッシュを詰め込む…。


ほら、見た目は全然分からないのだ。


そしてこれを、
中西がよく使う引き出しに入れておいた。

一部始終を見ていた仁田は、
親の世代ほど歳が離れた上司が
仕事以上に真剣に取り組む不審な行動に、
最初は唖然としていたが、
私が心の内を吐露すると理解を示した。

しかし…
あまりに悦んでいる仁田を見てるうちに、
 “コイツが黒幕なんじゃないのか…”
という疑念が湧いたが、
それ以上に楽しんでいる自分がいたのだ。


ということで、
“GMプロデュース”
「ラグジュアリー中西の人間モニタリング」
の幕は切って落とされた。

私が後から出勤してきた中西に、

「その阿闍梨餅、食べていいよ」

とさりげなく言うと、

「え、いいんですか?ありがとうございます」

と悪びれた様子もなく答える中西…。

私が予想した通り、
事態が動いたのはお腹の空く夕方である。

これから休憩に出ようとする中西が、
引き出しの中の阿闍梨餅を手にするのを
私は確認した。

追跡カメラ班がいないので、
歴史的瞬間が見れないのは残念だが、
これで一矢報いることができる。


30分後…
浮かない顔をして戻ってきた中西を見て、
私は成功を確信したのだが…

「GM、クダラナイ話をしていいですか?」

と聞いてきた。

「ん? どうした、何かあったのか?」

「実はこの阿闍梨餅を食べようとしたら、
ティッシュが入ってたんですよ…」

「え、マジで? アハハ!」

「こういうことってあるんでしょうか?」

「お前、それは“当たり”かも知れないぞ。
アハハ!」

「いや、ネットで今調べたんですが、
そんなことどこにも書いてないんですよ!
ひどくないですか?」

「...」

「クレームを言おうかと思ったんですが、
これって頂き物じゃないですか!」

「いや、クレームは止めといた方がいい…」

予想もしない展開に私は狼狽した。
このまま事が進むと、
製造元企業を巻き込むことになる。

天然素材100%キャラの中西には
ちょっと刺激が強過ぎたようだ。
しかも、そんな中西を騙そうとした自分が、
だんだん卑劣な人間に思えてきたのである。

何でこうなるのかよく分からないが、
ここは素直に敗北を認め、
正直に真相を明かした方が得策に思えた。

「お前はまだ気づかないのか?
それさぁ、実はオレが仕組んだんだよ」

「いや、そんなはずはありません!
だって、袋が開いてないじゃないですか!」

「だからさぁ、袋の裏のこの部分を
カッターでこうやって切ってさぁ…」

「でも...」

「いや、だからさぁ...」

そして、私は最後に言った。

「頼むから
オレを信じてくれよ!」と…

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                         「Kestrel」
         “I Believe In You”
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メンズビギ横浜店  GMより


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