それにしても…
好む好まざるはさておき、
クイーンほど老若男女の日本人に
知られている海外バンドはいない。
なぜ断言できるかというと、
スタッフの中西と仁田も知っているからだ。
あ、参考にならないか…
さて、その日…
久し振りに妻と映画館に行くことにした
重症なアナログオヤジの私は、
外出前にスマホ片手にチャチャッと
席を予約する妻の姿を
羨望の眼差しで見つめた。
(生きづらい世の中だ…)
しかも、どちらかが50歳以上の夫婦は、
かなり割引きになるらしい。
(生きててよかった…)
誰も気にも留めないだろうが、
英国国民的バンド“クイーン”に敬意を表しブリティッシュファッションで決めた私は、
大きめのハンドタオルを
持っていくのを忘れなかった。
私は自分でも呆れるほど泣き虫なのだ。
しかも、他人とポイントがズレている。
皆が泣くポイントでも当然泣くから、
映画を観ている多くの時間を
泣いて過ごすことになる。
私が映画館にあまり行かない理由の一つは、
こんな無様な姿を人様に晒したくないし…
オヤジの泣き姿ほど絵にならないものはない。
今回の映画は、ただでさえ
エイズによって45歳の若さで死去した
フレディ・マーキュリーの話が中心らしい。
ハンカチサイズではとてもムリだ。
さて、上映10分前に席についた私は、
映画館以外では絶対食べないポップコーンと
ビール(もちろん私だけ)を
だらしなくグビグビ飲みながら、
久し振りの“No More 映画泥棒”を眺めた。
この時点では
その後起こるプチ悲劇を知る由もなかった。
上映がスタートした。
冒頭、ライヴエイドのメイン会場である
ウェンブリースタジアムのステージに
かけ上がるフレディの後ろ姿を観た途端、
私は早くも涙腺が決壊した。
今まで経験した中で最短である。
その涙はフレディがブライアンと
ロジャーに出逢うシーンまで続いた。
そして私の好きな曲「Doing All Right」が
流れたその時、
急に尿意をもよおしたのである。
しまった!
私はビールを飲むと、
極度の頻尿になる体質であることを
この時スッカリ忘れていたのだ。
これも私があまり映画館に行かない
理由の一つである。
さすがに映画の序盤から
トイレへ席を立つ者はいない。
今まで経験した中で最速である。
溢れる涙と溢れそうになる膀胱…
久し振りに経験する予期せぬ苦行である。
生憎、私達が予約した席は
真ん中の少し前辺りだった。
シャイなクセに自意識過剰な私は、
こんな場面で目立ちたくはない。
私はひたすらスクリーンが
暗くなるシーンがこないか
固唾を飲んで見守った。
もちろん、泣きながら…
15分ほど経過しただろうか。
これ以上ほっておくと、
施設に甚大な被害を与えかねない…
と判断した私は、
意を決して立ち上がった。
もちろん、泣きながら…
たった今、心底信じていた男性から
別れ話でもされた女性のように、
私はスタスタとトイレへ走った。
これが最後のトイレになるよう祈りながら、
私は思いっきり用を足した。
今まで経験した中で最長である。
さて、その後私は一切ビールを口にせず、
なんとかトイレだけは持ちこたえたものの、
涙腺だけは開きっぱなしだった。
後半のライヴエイドでのパフォーマンスで、
私の涙放出量は遂にピークを迎えた。
今まで経験した中で最多である。
エンドロールが流れ出した時、
私はすでに放心していた。
「大丈夫?」
と顔を覗き込む妻に、
「うん。脱水症状みたい…」
と私は答え、
まだ誰もいないトイレへ駆け込んだ。
この映画は人によっては危険である。
フラフラになりながら映画館を出た私達は、
水分補給が急務と判断し、
昼呑みできる居酒屋に迷わず入った。
余韻が残る私はここでも何度か泣き、
以前二人で観に行ったことがある
「クイーン+ポール・ロジヤース」
のライヴを引き合いに、
「やっぱりクイーンは
フレディ・マーキュリーだな!」
ということで意見が一致したのである。
なぜなら…
フレディは単なるロックスターではなく、
稀代のエンターテイナーだったからである。
クイーンを馬鹿にしてはいけない。
ネタバレしなくて済んだかな…
~ おわり~
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「Queen」
“Doing All Right”
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メンズビギ マルイシティ横浜店 GMより
コチラも見てネ❗

