果たしてこのシリーズを読んだ人が
面白いのかどうかサッパリ分からないが、
どっちでもいいのである。
自分が楽しいから。アハハ…
さて今回は、
“メンズビギ ヒストリー”
《今西 祐次 編》のPART2である。
私は全てのコレクションを見てはいないが、
今西氏がデザインする服には、
タケ先生以上にヤンチャで明るいイメージが
あるような気がする。
テーマもマニアックなものが多かった。
私がBIGIグループに入社した1987年…
その年のメンズビギの春夏テーマは、
“NAKED STREETS”
ギャングをモチーフとした、
30'sスタイルの世界観が表現されている。
これはおそらく、
アメリカの黒人ミュージシャン(ジャズメン)やマフィアなどの服装としてよく見られた、“ズート・スーツ”からのインスピレーションであろう。
ズート・スーツについては、
別の機会に詳しく紹介しようと思うが、
これはかなり人目を惹くスタイルだ。
主張のある柄や織りや色。
強調した肩にゆったりとしたシルエット。
股上の深いタック入りのパンツを
サスペンダーで吊る。
色物のシャツに太めで派手なプリントタイ。
ツバ広のハットを被り、足元はコンビ靴。
お世辞にも上品とは言えないこのスタイルは、当時アメリカのマイノリティー達の、
社会への精一杯の反抗や自己主張の表れだ。
この絶妙なサジ加減こそ、
タケ先生の流れを汲む、
“天才デザイナー”今西祐次の
真骨頂ではないだろうか。
そしてこの雰囲気やスタイルこそ、
私を含め今でも多くの人が
メンズビギに対して持つイメージだと思う。
当時のショップスタッフは、
一分の隙もなく頭のてっぺんから爪先まで
全員このスタイルで身を固めて、
異様なオーラを放っていた。
ちょっと怖いくらいのカッコ良さである。
さてこの年、
今西氏は彼のデザインチームを引き連れて
ジャマイカに飛んでいる。
表向きは写真集制作の為の
フォトセッションだった。
しかし、好奇心旺盛な彼が、
“レゲエの国”ジャマイカまで来て
そのまま帰るはずがない。
彼はなんと!キングストンにある、
あの「ダイナミック・サウンド・スタジオ」でレゲエのレコードを録音したのである。
「ダイナミック・サウンド・スタジオ」は、
数々のレゲエの名作を生み出した聖地だ。
また、ローリング・ストーンズの“山羊の頭のスープ”や、クラッシュの“サンディニスタ”をレコーディングしたスタジオでも知られる。
さらに、この録音に参加したのが、
ダンスホール・レゲエ史におけるレジェンド、ウェイン・スミスだったのだ。
この時レコーディングされたレコードは、
ニューヨークのFMレゲエチャートで
1週間第1位となり、
ノベルティーとしてお客様に配られている。
メンズビギの服のバックには、
いつも音楽が流れていると私は思う。
ジャズやブルースを始め、
R&R、レゲエ、ヒップホップ…
タケ先生時代から続く、
英国クラシックをベースとしながら、
黒人音楽や文化をデザインモチーフにした服作りは、今西祐次の時代でさらに進化を遂げる。
しかし、彼の作る服には、
黒人や移民社会が抱える“光と影”や“陰と陽”の中で、明るさや楽しさにフォーカスしているのが特徴なのではないだろうか。
残念ながら…
メンズビギにおける今西祐次の時代は、
バブルの崩壊とともに終焉を迎える。
いつの時代でもこの心を忘れてはいけない。
Slick We Slick!
(俺達、イカすぜ!)
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「Wayne Smith&Roots Radics」
“Slick We Slick ”
(MEN'S BIGI's TUNE)
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メンズビギ マルイシティ横浜店 GMより
コチラも見てネ❗


【後日談…】
ある方から貴重な証言を頂きました。
文中に登場したレコーディングスタジオは、
Dynamic Sounds Studioではなく、
Channel One Studioだったそうです。
その方がなぜご存知かというと、
当時レコーディングと撮影を
コーディネートされたそうだからです。
スゴい!