ほとんど履いていない。
そう…
これは私を恐怖のドン底に陥れた、
あの“こむら返り”の原因ともなった
呪われたローファーなのだ。
定評のある某インポートブランドの
ローファーである。
深みのあるネイビーで重厚感もある。
本格的なグッドイヤーウェルテッド製法で、
ダイナイトソールを採用している。
細過ぎず丸過ぎない美しいフォルム。
一目惚れである。
このローファー半端ない!
(使い方あってるかな?…)
なんとか履けるだろう…
この甘い考えが間違っていたと気づくのに、
そう時間はかからなかった。
見た目は良いが、
ただでさえ足に合わないことに加え、
この重厚な作りが仇となり
ソールの屈曲性を妨げている。
痛い…
ムリ…
それ以来、私とこのローファーとの関係は
冷えきったままだ。
しかし、どんなにコジれた関係でも、
時間が解決してくれることがある。
もしかしたら、
そろそろ向こうから
歩み寄りをみせてくれるのでは?
毎年淡い期待を持って
一度は足を入れてみるが、
いまだ私を受け入れてはくれない。
しかし…
今年の私は違う!
向こうが歩み寄らないのであれば、
こちらからアクションを起こすまでだ。
“履けぬなら、
履かせてみせようコインローファー”
“履けるまで待とう”という
徳川家康のやり方ではもはや通用しない。
かといって、織田信長のように
“殺してしまおう”ではあまりに忍びない。
今年は豊臣秀吉方式を採用することにした。
実は…
私は前々からこのローファーの攻略法を
トイレの中で考えていたのだ。
このローファーの最大の問題点は、
足幅を優先して選んだ結果、
踵がユルユルで浮いてしまうことだ。
さらに私の場合、
モートン病と扁平足対策として、
土踏まずと足裏のアーチを保護する
専用のインソールを入れなければならず、
その分の余裕が幅と甲に求められるのだ。
私が考え出した攻略法とは、
元々このローファーの中に入っている
革のインソールを剥がし、
幅と甲に余裕をもたせることだ。
さらに、剥がしたインソールの革を切り取り、それを踵の内側に貼り付けて、
踵のユルさを防ぐ作戦だ。
まるで、高度な外科移植手術に挑む
ブラックジャックのように…
さて、問題はここからである。
この程度の手術で関係が修復するわけはない。
私とローファーの関係は、
それぐらいコジれているのだ。
次は、それぞれ用意した
数種類のインソールとソックスの中で、
一番履き心地の良い組合せを
見つける作業である。
しかし、家の中で試し履きするだけでは、
長時間耐えられるかは疑問だ。
実際に外を歩いて検証することが
何よりも大事なのだ。
だって、一旦仕事に履いて出掛けたら、
もう後戻りはできないから…
これは骨の折れる作業である。
最近の私は休みの度に、
インソールとソックスの厚さを調節しながら
このローファーを履いて
近所の散歩を繰り返している。
まるで、新車の走行テストのように…
スーパーにも行く。
郵便局にも行く。
バーミヤンにも行く。
一度、本屋に行った時は最悪だった。
あまりの痛さに取り出したインソールを
右手に鷲掴みにして帰ってきた。
『オレは一体何をしてるんだろう…』
と時々思わなくもないが、
今年の私は豊臣秀吉なのである。
天下取りには強い意志と信念が必要だ。
さて…
決して100%とは言えないが、
こうした数々の歩行テストの中から
遂に私はベストな組合せを発見したのである。
これならきっとイケる…はず。
でもまだ怖いから、
当面通勤はスニーカーで
お店にいる時だけローファーにしよう。
まるで、学校の上履きのように…
果たしてこのローファー、
5年の歳月を経て本格デビューとなるか?
結果は追ってお知らせします…
というのはウソである。
皆さんと同様、
この話、私もそろそろ飽きたから…
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いつか引退したら、
世界豪華客船の旅に履いてこうかな…
「Little Feat」
“Sailing Shoes”
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メンズビギ マルイシティ横浜店 GMより
コチラも見てネ❗

