その日のテーマは「餃子」であった。
いつものように私と仁田は、
閉店1時間ぐらい前から
餃子についての他愛もない考察を開始した。
焼き方がどうのとか、
具のバランスがどうのとか、
ビールと餃子があれば死んでもいいとか、
宇都宮人と浜松人の性格の違いとか、
味の素の冷凍餃子は侮れないとか…
世の中のお役に立つ話は皆無である。
そんなどうでもいい話をしていると
仁田が突然、
と聞いてきたのである。
前編に書いた通り、
この男にバーミヤン遺跡のことを言っても、
話が混乱するだけだ。
「すかいらーく系のファミレスだろ?」
「そうです、そうです!
あそこの餃子が意外に旨いんですよ!
しかも昼間だと生ビール200円で飲めます!」
「マジで? それはスゴいな。
池袋の“大都会”以上じゃないか。
ところでお前、
今回はちゃんと自分で行ったんだろうな?」
「行くどころか、ボクはバーミヤンで
バイトしてたこともあるんですよ!」
またか…
この男は自分が昔バイトしてきたお店の商品を絶賛する傾向があるのだ。
オリジン弁当しかり…
居酒屋庄やしかり…
ルピシアしかり…
あ、全部食べ物だ。
でも、決して悪いことではない。
世の中には自分が働いてきた職場を
ボロクソに言う輩も多いからだ。
どんな環境でも
良いところを見出す姿勢は大切である。
私がそのことを褒めると、
「GM、聞きたくないかもしれないですけど
ボクが今まで付き合ってきた娘も、
みんなイイ娘だったんですよ…」
「ウン、聞きたくない…」
ところで…
最近の私はファミレスに行く習慣が全くない。むしろ敬遠していると言ってもいい。
だから、現在のファミレス事情も
サッパリである。
しかし、仁田がもたらした情報は魅力だ。
バーミヤンからは、
“どうぞどうぞ、気兼ねなく
昼間から堂々とビール飲んでくださーい!”
という謙虚な姿勢が垣間見える。
日頃から、堂々と昼飲みできる
店を探すのに一苦労する私にとって、
需要と供給のバランスが完全に一致する。
しかも、家の近所にある。
これは盲点であった。
さて、仁田と私は
歳の差が開いているにも拘わらず、
意外と意見が一致することが多いのだ。
お互い認めたくないこともあるが…
以前私が、
「池袋にあるセンベロ酒場
“大都会”はイイぞ!
お世辞にも洗練されてるとは言えないが、
こういう空間も本気で楽しめる奴こそ、
本物の洒落者なんだぞ!」
とテキトーにススメたら、
仁田が勝手に舎弟と呼んでいる
お隣のタケオキクチの“オシャレ番長”
○○君を引き連れて、
休みの午前中から何度も行っているそうだ。
かなりのお気に入りらしい。
ちなみに…
この二人は周りの販売員の中でも
突出したお洒落だが、
収入に占める洋服代の割合
(おしゃれエンゲル係数)が異常に高い。
コツコツ貯金に励む若者が多い時代に…
私は彼等に賞賛と敬意を込めて、
おしゃれクソ野郎!(おしゃクソ!)
と呼んでいる。
こうした、時代に逆行した若者達を見ると、
なんだかウレシくなるのだ。
話を元に戻そう…
さて、バーミヤンに行く機会は、
意外にもその翌日の休みに早速訪れた。
その日は暑く、
昼メシも食べずに外出先から戻ったら、
すでに午後2時前だった。
生ビールが飲みたい…
私は迷わずバーミヤンに向かった。
昼下がりのバーミヤンは空いていた。
外の強い日射しから店内に入ったせいか、
薄目で見れば
リゾートホテルのメインダイニングにも見える…いや、やっぱり無理がある。
席に案内されメニューを凝視した。
すると、本当にあった!
午後2時からハッピーアワーで、
生ビールが200円である。
なんというタイミング❗
さらに…
結局私は、生ビール4杯と梅酒ロック1杯に
おつまみ4品で腹パンになった。
お会計はたったの2,000円。
世の中まだまだ捨てたもんじゃない。
オシャレである。
旨そうである。
なんだろう? このギャップは!
いかん、いかん。
こんなことを比較してはいけないのだ。
どっちの環境でも
プライドを持って楽しむ心こそ、
本物の洒落者なのだから…
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「Coverdale/Page」
“Pride & Joy”
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メンズビギ マルイシティ横浜店 GMより
コチラも見てネ❗

