『人間には二種類ある。
それは○○と○○である…』
私はこの言い回しが昔からお気に入りで、
○○に適当な言葉を当て嵌めては
その完成度を自己採点して
楽しむことがある。
上手くハマった時などは、
『オレって天才?』
とか、
『これは名言だ!』
などと心の中で一人ほくそ笑むのである。
この遊びを、私は密かに
“人間二種類説ごっこ”と呼んでいる。
やっぱり変わり者なのだろうか…。
ところで…
先日テレビを点けたら映画をやっていた。
それは、2014年公開のアメリカ映画
「ブルージャスミン」である。
時間がなくてちょっとしか観れなかったが、
面白そうな映画であった。
監督と脚本は、ウディ・アレンだった。
どおりで…。
ウディ・アレンも
どう見ても変わり者に違いない。
変わり者は同じ匂いのする者に敏感なのだ。
昔、初めて観たウディ・アレンの映画は、
「アニーホール」だ。
ニューヨークを舞台にしたこの映画は、
大都会に生きる男と女の出会いと別れを
コミカルに描いたラブストーリーである。
それまで観たこともなかった
長い会話や、カメラの長回し。
突然カメラに向かって話しかけるなど、
独特の世界観がある。
テンポのいい会話のやり取りや
台詞回しを聞いてると、
ニューヨーカーらしい
スノッブでお洒落な感じもするが、
その内容はウディ・アレン演じる
主人公アルビーの
コンプレックスの塊のような
偏屈さが垣間見え、
陽気な中にも哀切さがある。
こんな種類の面白い
アメリカ映画があるのか…
と当時の私は思ったものである。
さて、今回は映画の話ではなく
ファッションである。
一般的にアニーホールといえば、
ウディ・アレンと
公私ともに親密な関係にあった、
ダイアン・キートンのファッションだろう。
そして、ラルフローレンのネクタイ…
「アニーホール・ルック」と呼ばれた
このマニッシュなファッションは、
当時のファッション界に影響を与えたのだ。
70年代…
女性が男物の服を着たカッコいい好例は、
ダイアン・キートンと
“NYパンクの女王”パティ・スミスが
二大巨頭ではないだろうか。
では…
そろそろ本題に入ろう。
今回は女性ファッションではなく、
変わり者のウディ・アレンの
ファッションついてである。
多くの女性が憧れたり影響を受けた
ダイアン・キートンのファッションと違い
ウディ・アレンのそれは、
一見ジジ臭くオタクのようにしか
見えない。
『人間には二種類の人間がある。
それはウディ・アレンのファッションを
カッコいいと思う人間と
カッコ悪いと思う人間である…』
さて、貴方はどっち?
ウ~ン。
これは最近の中では最高の名言である。
彼のファッションですぐに思い浮かぶのは
チェックのシャツ、コーデュロイや
タック入りの太目チノパン、
ツィードのジャケット、ワークっぽい革靴、ウェリントンタイプのセルフレーム眼鏡…
全体的にいつも茶色っぽい。
特に、彼のアイコンともいえる
チェックシャツのインナーには、
丸首のTシャツ。
しかも白ではなくどこまでも茶系だ。
パッと見、おじいちゃんである…
おそらくこのコーディネートを見て、
カッコいい!
と思う人は少ないどころか、
ダサっ!
と一笑に付す人の方が多いのではないか。
一般的に女子ウケは絶対しないはずだ。
婚活や合コンには要注意である。
しかし…
ファッションの奥深いところは、
これも一つのお洒落な着こなしである点だ。
洗練されたキメキメのファッションだけが
お洒落だとは限らないのである。
“ナード・スタイル” って、
ご存知だろうか?
ナード(nerd)とは、
特定分野にのめり込んだ
その分野の知識が豊富な人や、
文科系サークルに属する人…
要するに、オタクとか、冴えないとか、
ダサいなどといった意味合いがある。
でもファッションにおけるナードとは、
敢えて そういう人達に見えるよう
ダサい印象をもたせたスタイルのこと。
大きめの眼鏡もその代表例である。
しかしここには大きな落とし穴がある。
ただダサいだけではNGなのだ。
あくまで ダサくキメる!
ことがポイントである。
このダサ格好いい!というのは
非常に難易度
が高い。
本物の洒落者だけに許された
自己主張である。
一歩間違うと笑い者になるからだ。
そしてここ数年、
にわかに注目を浴びている
ナード・スタイルのお手本が
ウディ・アレンなのである。
前述のように彼のファッションは、
おじいちゃんの家の
クローゼットの中にあるような、
古めかしいアイテムを
ファッションに取り入れている。
きっとラルフ・ローレンあたりだろう。
Tシャツにジーンズ、スニーカーではなく、
ジャケットを羽織り、レザーシューズを
履いているインテリ人っぽさが
ポイントである。
しかも、それらのアイテムを
オーバーサイズで着崩しているのが特徴だ。
このサイズ感、丈感、幅感は、
本人が意識してるかどうか分からないが、
絶妙なバランスの上に成り立っている。
ここで、古今東西の “ダサ格好いい“ を
体現した好例をもう一人挙げてみよう。
それは90年代のロックシーンに
革命を起こしたロックバンド
「ニルヴァーナ」のカート・コバーンだ。
彼のパジャマ・スタイルは、
ファッションシーンにも影響を与え、
その後パリコレにも登場したほどである。
朝のゴミ捨て場では、
いまだにその影響を受けた人を
よく見かける…(冗談ですよ、冗談!)
これはやはり、
“カリスマ”カート・コバーンだからこそ
成せる業だろう。
もし私がパジャマで街をうろついていたら
間違いなく保護されるはずだ。
その点、ウディ・アレンのスタイルなら
可能性を見出だせるかもしれない。
私は昔から彼のファッションが好きだ。
こんな仕事をしているのになんだが、
私の場合はどうもキメキメのスタイルが
気恥ずかしくて苦手なのである。
確かにメンズビギの服は
洗練されてシャープでカッコいい。
でも、私は休日にはほとんど着ない。
休みの日ぐらいは普段お店では着れない
自分流のダサ格好いい!スタイルを
実践したくなるのだ。
そんな私の姿を見る度に、
妻は白い目を投げかけるが、
たまにウディ・アレンを通り越して
名作ドラマ「北の国から」の
黒板五郎になってしまうことがある。
「お願いだから、やめて!」
と懇願されることがある。
やり過ぎもよくないのである。
ところで…(そろそろ長いかな?)
私が所有するCDの中で、
特に好きなジャケットがある。
それは英国のフォークロックバンド
「フェアポート・コンベンション」の
“アンハーフブリッキング” である。
ヒプノシスでもロジャーディーンでもない、
この一見地味なアートワークの
何に惹かれたかというと、
右側に写る老人のファッションである。
シャツとキャメルのクルーネックニットに
折り目の入ったグレーのフランネルパンツ
そして茶色のスエードチャッカーブーツ…。
超ダサ格好いい!
その昔、私はこのコーディネートが
したくてしたくて堪らなくなり、
あちこちのセレクトショップを
血眼になって探し回り、
やっと手に入れたことがある。
“ダサさの中にあるカッコよさ…”
他人を見て、軽々しく“ダサい!”と
決めつけるのは危険だ。
貴方が見たその他人は、
もしかしたら貴方よりお洒落かもしれない。
うーん。
ファッションはじつに奥深い。
これだから面白いのである。
………………………………………………………………
ロックの世界で “ダサ格好いい” といえば、
私は「フォークロック」だと思う。
この曲なんか前半は静かなトラッドだけど、
後半の演奏は痺れるようなロックなのだ。
「Fairport Convention」
“A Sailor's Life”
……………………………………………………………………
メンズビギ マルイシティ横浜店 GMより
コチラも見てね❗

