おみやげ【後編】 | メンズビギ マルイシティ横浜店 GM(ゼネラルマネージャー)の極私的ブログ

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(写真はイメージである)

買ってきたはずの“おみやげ”を、
なかなか持ってこない中西…。

とは言え、
「ねぇ、中西君❤。
最近、大事なこと忘れてないかな?
例のおみやげはどうなってるのかな?
風の噂では黒蜜が…」
とは、なかなか自分の口からは言い出しにくいものがある。

日頃はズケズケと物申す私であるが、変なところで言いたいことが言えないナイーブさがあるのだ。
特に悪意のない相手ほど始末に負えない。

この話を仁田にすると、
「じゃあ、僕がさりげなく伝えましょうか?」
と言うので、
「いや、ちょっと待て。
オレにもプライドがある。
だいたい何でこのオレが、中西のおみやげごときでこんなに気を揉まなくてはならないんだ!
アイツもアイツだ!あれだけ気を持たせておきながら、連日忘れるとはどういことだ!
“今の自分があるのはGMのお陰です”とまで言ったのは、どこのどいつだ!
しかも中身は黒蜜だぞ!」

私の心のダムは決壊し始めた。

「そもそも、オレがどうしてもおみやげが欲しくて、お願いだから買ってきてネ❤。できれば黒蜜の…などと駄々をこねたり、猫なで声を出した覚えは一切ない!
今のこの状況は、何かおかしくないか?
こういうのを不条理とか理不尽と言うんだ!
あ、オマエ意味分かるか? まぁ、いい。
このままじゃオレは人間不信になってしまうぞ!」

私は自分の発した言葉に触発され益々ボルテージが上がる一方、仁田は笑いを堪えるのに必死だ。

一瞬、仁田もグルなんじゃないか?
と思ったが、口には出さなかった。
何となくまだ味方につけておいた方がいいような気がしたからだ。
一度疑念が芽生えるとキリがないのは自分でも分かっている。

そして、少し冷静を取り戻した私は決断した。
徹底的に静観することに。

こうなったら、目には目を!歯に歯を!の ハンムラビ法典 である。

私の計画はこうだ。
仁田の協力のもと、中西の前では“おみやげ”の件を喚起させるような発言や行動を一切慎むのである。
あくまで中西本人が気づくまでひたすら待つのだ。その間我々は、中西に対し何事もなかったように振る舞い続ける。

そしてある時、遂に中西が、
“あ、尊敬?するGMに、おみやげ渡すの忘れていた!どうしよう…”
となった時、彼は今までの人生で経験したことのない最大級の 罪の意識 に苛まれるはずだ。
その姿を見て大いに楽しむのである。

期限は今年一杯。
この作戦は、時間が経てば経つほど絶大な効果を発揮するのは計算済みだ。
なぁに、私が味わった精神的苦痛をヤツにも少しは味わわせてやる。
我ながら料簡が狭いのは重々承知しているが、古今東西、食べ物の恨みは普遍的なのである。

気がかりな点は3つ。
①仁田が寝返ること。
②仁田は二重スパイかもしれないこと。
③黒蜜の賞味期限が切れる恐れがあること。

しかし、私のプライドの前にはどれも取るに足らないことである。

その後数日は仁田と逐一経過報告し合っていたが、リニューアルに向けての準備などで忙しくなり、いつの間にか“おみやげ”のことを忘れかけていた2週間後…

遂にその日の朝、中西は、
「遅くなりましたが、おみやげです」
と緑色の包みを差し出した。
今まで何事もなかったかのように…

不意を突かれた私は、
「ありがとう」
と条件反射で受け取っていた。
今まで何事もなかったかのように…

予想外の結末であった。
罪の意識も…怒りも…
そこにはなかったのである。
あれほど翻弄された(私だけ?)おみやげの授受は、呆気ない幕切れとなった。
賞味期限のチェックだけは忘れなかったが…

この一件を通して得た教訓は、
次のページである。

【教訓その1】
もつれた感情は、
時間が解決してくれる❗

【教訓その2】
おみやげは、
いつ貰っても嬉しい❗

【教訓その3】
おみやげを貰うのに
プライドは要らない❗

あれ?しくじり先生みたいだな…

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                              「U2」
                “PRIDE”

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メンズビギ  マルイシティ横浜店  GMより