重陽の節供 | もてなし // hospitality // おもてなし

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9月9日は「重陽の節供」です。

重陽の節供で思い浮かべるのは、中国から伝わった不思議な少年のお話です。

 

中国の古代国家「魏(ぎ)」の文帝から、不老不死の霊酒が湧く泉を探すよう命ぜられた臣下の男が、深い山に分け入って行くと、美しい少年に出会います。

少年は700年前の「周」の穆王に仕えていたと言い、辺り一面に咲き乱れる菊から滴り落ちる露を飲んでいるため、700歳までも生き続けていると語ります。


お能の「菊慈童(観世流)」「枕慈童(金剛流)」はこの伝説を題材にして作られています。

 

 

 

                 金剛流「枕慈童」 冷泉為人著「五節供の楽しみ」より

 


滴り落ちる菊の露は泉となり
「泉は元より酒なれば 汲みては勧め 掬いては施し わが身も飲むなりや……」

と慈童(少年)は舞います。

 

伝説の慈童の若さにあやかって「菊の酒」を頂きたいものです。

 

また、「菊の着せ綿」というゆかしい習慣があります。
菊花に真綿(絹の綿)をかぶせて、夜露を含ませ、

「仙人の織る袖にほふ菊の露 打ち払ふにも千代は経ぬべし」

と言いながら肌を拭けば、若さを保つ美容効果があると、平安時代の宮中の女房たちが始めたのだそうです。

 

 

                和菓子 「着せ綿」   

 


まだ暑さの残る9月9日では菊花の香りも実感がわきませんが、旧暦の9月9日(10月17日)にはしっくりくるかもしれません。

菊を使った料理は、秋の楽しみの一つです。

 

 

               重陽の料理  菊花蕪に菊の葛あんをかけた煮物

 

 

 

 

3枚の写真は 冷泉為人著「五節句の楽しみ」に掲載されていたものを使わせていただきました。