こんにちは、米国公認会計士の橋本です。
今日は、フィリピンにおける外国法人と内国法人についてお話ししたいと思います。
海外における日系企業というのは日本企業或いは日本人が株主である状態にある会社のことを指します。外国資本(フィリピン以外の外国会社や個人の資本)により一部或いは全部株式が保有されている会社は、フィリピンにおいても外資系の会社として扱われます。
日本にはなじみのない言葉かもしれませんが、東南アジア諸国の大半が外国人(外国法人)が株主である会社に対しては、業種や資本金、或いは土地の保有に対して一定の制限を受けることとなります。
フィリピンの場合、業種によって外資制限としてネガティブリストの存在が知られています。
第11次ネガティブリスト(2018/11/16発効)
禁止事業
レコーディング及びインターネット事業、
専門職(放射線、レントゲン技師、犯罪捜査、弁護士)
払い込み資本が250万ドル未満の小売業、
協同組合、
探偵、警備員、警備保障会社
小規模鉱業
海洋資源の利用、
天然資源の利用、
闘鶏場の保有と運営、
核兵器の製造・修理・貯蔵・流通、
爆竹その他花火製品の製造
外国資本が25%以下に制限されている分野
雇用の斡旋、防衛関連施設の建設
外国資本が30%以下に制限されている分野
広告業
外国資本が40%以下に制限されている分野
天然資源の探査、開発、利用
私有地の保有
公益事業の管理、運営。
教育機関の設立運営。
米、とうもろこし産業(操業開始から30 年以内に、資本の60%以上をフィリピン国民に
放棄あるいは譲渡する場合、外国資本100%参入可)
国有・公営・市営企業への材料、商品供給契約
深海漁船の運営
コンドミニアムユニットの所有
ラジオ通信網
日系を含む外資系企業或いは事業を営む外国人は上記の外資規制を順守する必要があります。
前置きは長くなりましたが、ここからが本題です。
Q.フィリピンにおける外国法人とはなんでしょうか?
A.外国法人とは外資系企業のことではありません。外国法人とはフィリピン以外の国の法律により設立された会社のことです。例え外国資本が100%であったとしても、フィリピンの会社法に則って設立された会社は内国法人となります。すなわちフィリピンに設立された現地法人はすべてフィリピン内国法人となるということです。
フィリピンにおける外国法人とはどのようなものでしょうか? それは日本企業の駐在員事務所やフィリピン支店などが外国法人に該当します。 では外国法人と内国法人の区分けがどうして必要なのでしょうか。例えばたとえ内国法人であっても資本金の持ち分比率が40%を超えているとその企業の国籍は非フィリピン人として扱われます。すなわち内国法人でありながら、国籍は外国人のように扱われるということです。 上記のネガティブリストに示したように、外国資本が40%を超えているとその企業は外国人として扱われ土地の保有ができなくなるという問題が生じます。ですのでたとえ内国法人であっても外国人の株式保有比率には気を付けなければなりません。外国法人かどうかの認識が必要になるのは主に税金を計算するときにその問題が表出します。
内国法人は全世界課税なのに対して、外国法人はフィリピン国内源泉所得についてのみフィリピンで課税されます。すなわち外国法人の場合、フィリピン以外の国で発生した収益に対しては課税されないということになります。その場合、収益が発生した国の税制に従うこととなります。また国内源泉所得についてのみ課税されますので、外国税額控除は適用されません。
すなわち外国法人はフィリピン国内源泉所得においてのみ課税され、外国で発生した収益に対しては課税されないという特徴があります。しかし外国には外国の税制が存在しますので、そちらの税制に従い外国収益に対する課税がなされます。
内国法人か外国法人の区分けは会社法や税法上の区分けであって、外資規制関連法に区分けが明記されているわけではございません。
では、外国法人がフィリピンにて事業を行う場合、投資奨励や税金優遇を受けられるPEZAやBOIに登録することはできるのでしょうか。外国法人が法律行為を行う場合、誰が法的責任者となるのでしょうか。(本社の社長でしょうか或いは現地法人の担当者でしょうか)。或いは新規に設立する場合、現地法人を設立するほうが良いのでしょうか。或いは企業買収などで事業の買い取りによる事業展開を考えるほうが良いのでしょうか。
いずれの場合にしても外資規制には十分注意して設立いただけますようお願いいたします。
ありがとうございました。.