社会を支配するビジネスエリート
「どの大学を出たか」ということが、実際にはどれほど人のキャリアに影響を与えるのだろうか。米国の場合、エリート大学の卒業生は、世間の想像をはるかに超える圧倒的な成功を収めている。
米誌「アトランティック」によると、ハーバード大学をはじめとするアイビー・リーグ8校に、同等の合格難易度を誇るデューク大学、スタンフォード大学、シカゴ大学、マサチューセッツ工科大学を加えた「アイビー・プラス」の学生数は、米国の全大学生の0.5%にも満たない。
にもかかわらず、これらの大学の卒業生は、フォーチュン500企業のCEOの12%以上、ニューヨーク・タイムズ紙のジャーナリストの32%、そして米国の資産上位0.1%の富裕層のうち13%を占めているという。
一部の大学に偏った、この圧倒的成功の要因は何か。彼らがもともと優秀で特権的な若者だったからか、あるいは、トップレベルの教授陣による教育の賜物なのか。それとも、単に採用担当者が大学のネームバリューに固執しているだけなのだろうか。
ブラウン大学の経済学者ジョン・フリードマンは、長年この問題を研究してきた。その結果、世間で語られるこうした通説とは異なる結論に辿り着いた。
大事なのは学問的な内容や大学の威信そのものではなく、「才能豊かで野心的な人々に囲まれた環境で、いかに成功するか」を学ぶ機会なのだ。フリードマンは同誌にこう語る。
「このような人々と一緒に課題をこなしたり、クラブ活動をしたり、食事を囲んだり、寮で誰と誰が一緒に住むかを決めたりする。そうしたあらゆる経験が組み合わさった結果、これらの大学は、社会の中枢を担うビジネスエリートとなるための、唯一無二の訓練の場となるのです」
補欠合格者を比べてわかったこと
フリードマンらの研究チームは、エリート大学の優位性が何によってもたらされているかを知るために、ユニークな調査をおこなった。対象を、これらの大学の「補欠合格候補」となった学生のみに絞り、その後のキャリアを比較したのだ。
最終的にアイビー・プラスへの入学を許可された学生と、欠員状況など、あくまで「運」によって入学できなかった学生の間には、実質的な能力の差は認められなかった。フリードマンらは、この「入学時点の実力がほぼ同程度」という条件のもと、両者のキャリアを追跡調査した。
彼らのうち、アイビー・プラスに進学したグループは、トップレベルの州立大学に進学したグループと比較して、33歳までに所得上位1%に入る確率が50%高かった。さらに、エリート大学院に進学する確率は2倍、一流企業に就職する確率は3倍だった。卒業から10年後の平均年収にいたっては、10万1000ドル(約1600万円)もの差がついていた。
つまり、アイビー・プラスへの入学そのものが、彼らのキャリアを明確に押し上げたといえる。
これがもし、大学というブランドがより重要なのであれば、卒業生たちが最も恩恵を受けるのは卒業直後の数年間のはずだ。というのも、キャリアが進むにつれて、学歴よりも実際の仕事であげた成果のほうがはるかに重要になってくるからだ。
「人脈があり、OB・OGとのつながりがあることは、投資銀行での最初の仕事を得るときには役立つかもしれません。ですが、順調にキャリアを築いていくためには、入社後も高いパフォーマンスを発揮する必要があります」と、フリードマンは同誌に語る。
「重要なのは『誰を知っているか』ではなく、彼らがどのような人物になったか、ということなのです」
才能と野心を持ち合わせている人は、どこの大学にもいる。しかし、アイビー・プラスのようなエリート大学では、その「密度」が異なるとフリードマンは指摘する。
「これほど多くの優れた学生と、これほど濃密な空間で接すること。それこそがアイビー・プラスやその他の超難関校を、トップクラスの州立大学とは一線を画す存在にしている要因なのではないかと考えています」
その機会を得るためには、高額な授業料も支払う価値がある──。これが、米国の格差社会を支える、大学教育の身も蓋もない真実なのかもしれない。









