世界でWeb制作会社がHP制作のみで活動できない理由 | 米国公認会計士のフィリピン税金や法律のあれこれ

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こんにちは、米国公認会計士の橋本です。

 

 先日、マニラのWeb制作会社の友人から世界のWebマーケティング業界についていろいろと話を伺いました。その会社は設立当初の2006年から約6年間は単なるHP制作を業務のメインとして活動されていました。 しかし2012年頃からアメリカなどからのHP制作の外注委託が急激に減少してきたそうです。 その会社はローカルの会社からの制作委託と同時にアメリカやカナダ、オーストラリアの制作会社からの業務委託を受けてWebサイトの制作を行ってきたのですが、その頃から世界中の名だたる会社はHPは単に制作して終わりという時代からクロスボーダーや取引先のグローバル化を視野に入れたサービスやデザイン、ブランディングを高めるための一つの手段と位置付ける企業が多くなりつつあり、それに伴って単に依頼されたHPを制作して納品するだけの時代は終わりを迎えました。 Webマーケティングの世界で日本は世界の潮流から約10年遅れていると言われています。 そうなると日本でも2022年頃からWebの世界も価値観や求められるサービスの内容も大きく様変わりしてくるのではないでしょうか。

 

 ではWeb制作、システム開発、Webマーケティングのみで生き残っていけない理由と今後求められる価値観やサービスとはどのようなものなのでしょうか。

 

1. 多くの企業はWebに関する機能を社内に持つ

日本に比べてWebサイトや、オンラインマーケティングに関する重要性を認識しているアメリカや海外においては企業内にWebに関連する部署、もしくはスタッフを配置しているケースが大半といえます。

 アマゾン、アップル、Facebook、Google、マイクロソフトのような大企業には数百人規模のWeb関連スタッフが在籍していてWebやその他のソーシャルメディアのコンテンツを内で制作しています。 またそれに倣ってアメリカでは多くの企業が社内にWebデザイナーや,オンラインマーケティングに関するスタッフを配属しています。社内のスタッフでは対応できないような特殊な案件や一時的なリソース不足が無い限り、大手企業はWeb制作関連の仕事を外注する事はなくなりました。

2. 外注コストの低下

Webに関する人材を社内にまかなう事が難しい中小企業の場合はWeb制作やシステム開発等を外注する事になりますが、ビジネスの性質上、オンラインでのやり取りが一般的であり取引において相手方とは一度も会わずに仕事を進める事も少なく無いとされています。

特に最近はクラウドの環境やネットを活用したビデオ会議等の普及で、実際に会わなくとも意思疎通が可能となりました。

英語を公用語とするアメリカやオーストラリアでは国内でなくても英語が通じる他の国及びそこに住んでいる人々に仕事を発注する事も珍しくはありません。特に生産コストの低い東南アジアや南米、アフリカ等に外注する事で制作コストを大幅に抑える事が可能となります。

実際、20年ほど前からクラウドソーシングサービスを利用してWebサイトの作成、SEO, SEM等ある程度パターン化した業務を海外に発注する事が一般的となっていますので、アメリカ企業がアメリカのWeb制作会社に依頼する経済的合理性が失われつつあり、システム開発、オンラインマーケティング等のサービスはコモディティ化が進み、コストの安い国外に発注する事が一般的になりつつある。

3. フリーランサーの存在

もう一つのファクターとして、フリーランサーの存在がある。日本だとフリーで仕事をしている人達は非正規雇用という事で、謎の社会的プレッシャーを感じて企業への就職を希望している方々も少なくないでしょう。また、一企業が重要な仕事を企業ではなく、フリーの人に発注する不安もあるかもしれません。しかしアメリカではフリーで働く事は一つの憧れでもあり、特にデザイナーなどは実力一つで有名企業の仕事を請負う事がステータスにもなっています。また、企業側から見てもフリーランサーをジョブ型の契約社員として雇う事は非常に一般的なケースでもあります。

実際に特定のデザイン会社に属する事無く、優れた技術を売りにプロジェクト毎に大きな報酬を得る凄腕エキスパートデザイナー,英語で言うところのRockstarデザイナーも多数存在します。

そして、企業にとっても、必要な時に必要な能力やスタイルを持ったデザイナーやデベロッパーを起用するケースが一般的であり、そのような技術者を従業員として抱えるよりもコストやリスクの面でベターなオプションである場合もあります。

加えてフリーランサーや事業主が多いアメリカでは、おのずと保険や労災、年金など、彼らをサポートする制度やサービスも充実しているためひとつの企業としてオフィスと従業員を抱えている会社がフリーランサーでも提供可能なサービスにおいて、コスト面で彼らと勝負しても勝てる見込みは少ないでしょう。

4. スタートアップによるデザインスタジオの買収

最近になり、デザインの重要性に気づき始めたIT企業がこぞってデザイン会社の買収に走る自体が発生しています。例えばEbayのユーザーエクスペリエンスを手がけた素晴らしいデザイン会社、Hot StudioはFacebookに買収され、モバイルUIの得意なMike & MaaikeはAndroid向けにGoogleが買収。AdobeがBehanceを、Squareが80/20を、アクセンチュアがFjordを買収した。また、グローバル規模で展開している大規模代理店のnuranがodopodを買収しました。彼らの高い技術力を持ったデザイナーに魅力を感じて大企業が優秀なデザイナーを多く抱えるデザイン会社を買収するケースがあります。 すなわち優秀な人材を抱える企業は高額な報酬をちらつかせた大企業からの人材の引き抜きにあったり、実力のある人はフリーランスとして独立したりで、優秀な人材であればあるほど小さな制作会社にとどまり続けることはよほどの理由がない限りあり得ないことなのです。やはり小さな制作会社が存在し続ける事が困難な理由がここにあるのですね。 さらに単にWeb制作やデザインのみを請け負う会社が存在し続けることは無理というものです。

顧客のビジネスを、

「成功へと導くストーリーを作り出せるかどうか」

で価値が評価される。

この10数年間、何社もWebデザイン会社が無くなったのを覚えています。私の顧客だったシアトルのWeb制作会社も廃業しました。ソフトランディングしてエクジットしたケースもあればハードランディングや倒産したケースも多数見受けられます。現在のグローバルな社会ではこれといった特徴の無いWeb制作/開発/マーケティング会社が存在するのはかなり困難だと思われます。 経済的合理性を追求した場合、単に同じ国の制作会社だからという理由での制作依頼は皆無といえます。 依頼やコミュニケーションも英語が通じる相手である限りにおいて外国の委託先と即時伝達を行うことができ、不便を感じることはあまりないかもしれません。

 

 どの業種にも言えることですが単にモノや形を”作る”だけでは生き残れないことが分かるでしょうか。なんらかのかたちでクライアントを成功に導く所までのストーリーを描ける会社だけが生き残る時代が到来しています。多くの制作会社は最終的にはWebやソーシャルメディアを通じたブランディング会社、広告代理店、PRエージェンシーなどに進化を遂げる事で生き残りを実現しています。単に技術力だけを武器に日本から世界展開しようと思っている会社ではグローバルの潮流にすぐに飲み込まれて跡形もなくなってしまうことでしょう。 英語が話せるということはビジネスの国際化の第一条件ではありますが、英語を話せたその先に真のグローバル化の洗礼を受けることでしょう。 世界を目指すのであれば、まずは資金を含めていろいろな準備をして臨まれることをお勧めいたします。