数日前、「カメムシですかね…」、と、杉さんがスマホを持ってやってきました。
画面を見ると、黒っぽいアスファルトの上を歩く昆虫が写っていました。広いお腹に特徴的な白黒の模様があって、脚が長く、良い印象は受けません。
ルックスから杉さんの見立て通りカメムシ目の昆虫だと思いましたが、胸部が小さいので一般にカメムシと呼ばれるものではないでしょう。
ふと、「サシガメ」という言葉が頭に浮かび、ネットで検索したところ、ヨコヅナサシガメ(Agriosphodrus dohrni)であることが分かりました。
カメムシは植物食性のものが多いけれど、サシガメというのは動物食に特化しています。カメムシより太いかぎ状の口吻を獲物に突き刺し、毒素や消化液を注入して溶かされた組織を吸って食べます。腹部が大きいのは、吸い貯めができるようになっているのでしょう。
このヨコヅナサシガメというのは、いろいろな樹木に住んでいて、主に芋虫や毛虫を襲っているそうです。特にサクラの樹が好きだというから、葉っぱを食害する悪い虫からサクラを守ってくれる益虫だと考えることもできますが、うっかり刺されるとひどい痛みがあるそうだから、出会いたくはありません。
それに、ピアノの鍵盤にたとえられる腹部の模様といい、細長い頭部といい、とっても性悪そうです。
集団を作り、寄ってたかって大きな獲物も襲うそうだし、襲われる方にとっては、たまったものではないですね。
このヨコヅナサシガメちゃんは、なぜか路上で単独で行動しているところを、たまたま杉さんに撮影されましたが、いつもは樹の高いところや葉の裏にいるため人目につくことはないそうです。
産卵期になると幹の低いところに降りてくる、とか、獲物の毛虫が少ないとダンゴムシなんかも襲う、という情報もあります。
腹部が平たくしぼんでいるように見えるので、きっとこの子はお腹がすいて、1人でも狩れそうな小さな虫でも探しているんじゃないかな、と、思いました。