高校生物学習教材 体液の種類を分かりやすく | はし3の独り言

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腕時計に自転車、高校理科の話題が多いブログです。日常で印象に残った出来事も取り上げます。時間があって、気が向いた時しか更新できていませんが、ご愛顧よろしくお願いします。

 生物基礎で恒常性を教えるには体液の話から始めるんですけど、いまいちスッと理解して貰えません。

  

 理解不足を放っておくと、「酸素解離曲線が分からない子」が出来上がります。さらには「肝臓や腎臓の仕組みが理解できない子」が量産されます。定期テストは暗記に頼って切り抜けても、きっと共通テストでひっかかるだろうな。

 

 そんなひどいことにならないように、おまじないのつもりで描いた図です。良かったら参考にしてください。

 

 
 まず、体内環境の定義を確認しましょう。

 

 生物個体にとって身の回りに直接的にあるものは空気です。これを体外環境といいます。ここでみなさんに、もし自分が細胞だったらと想像して欲しいんですが、周りにあるものは何かというと組織液と呼ばれる液体になります。これが細胞にとっての直接的な環境になるので体内環境と言います。図では黄色で塗って表現してありますが、まずこの組織液を体液の一つとして覚えましょう。

 

 組織を構成する細胞は、居心地が悪くても勝手に動いたりできませんから、絶えず酸素や栄養を組織液から受け取って、二酸化炭素やその他の老廃物を運んでもらわないといけません。

 

 細胞にとっては絶えず新鮮な組織液が循環してくるかどうかは死活にかかわる大問題なのです。

 

 

 

 さて、体液の循環と言えば血管で、中に血液が流れていて~。と、難しいところはなさそうに思えるんですが、血液と組織液の関係がつかめないと状況は最悪になるので気をつけましょう。

 

 血液は心臓から動脈を通って組織をつくる細胞の近くまでやってきていますが、まず血管というのは3層構造になっていて、特に動脈の壁は高い血圧に耐えるために厚く、弾力があり、血液が漏れ出すことはありません漏れちゃったら大出血です)。

 

 だから、動脈は酸素や栄養を、組織を作る細胞に渡すことができないので、まあ、近くまで運んでくるのが仕事になります。

 

 じゃあ酸素や栄養分はどうやって組織のところまで行くかというと、まずは血液に乗って動脈から出て毛細血管に移ります。

 

 

 

 毛細血管というのは、一層の細胞の層でできた細い管で、ろ過機能があるのが特徴です。ろ過機能というのは、大きなものは出せないけど、小さなものは出すってやつですね。 

 

 この毛細血管を、動脈でも静脈でもない特別な血管として認識することは、あとあと響いてくる何かと重要なポイントです。血液の成分のうち液体成分の血漿(けっしょう)は毛細血管からしみだして組織を作る細胞に到達でき、酸素や栄養分を渡すことができるようになります。

 

 このとき組織に溢れ出た血漿は組織液と名前を変えるのです(白血球も毛細血管から組織中に出るので、本当はこの言い方は乱暴なのかもしれません。)

 

 

 

 

 実は動物界を見渡すと、毛細血管を持つのは我々脊椎動物を含んだ少数派で、毛細血管をもたない方が多いのです。この場合、動脈の先端から組織中に直接血液が解放されますので、この仕組みを解放血管系といいます。これに対して毛細血管が動脈と静脈をつなぐものを閉鎖血管系といいます。

 

 で、私たちは何をしたくて毛細血管を持っているんだ、と、なるわけですが、血液の成分のうち、赤血球が出ないようにしているとみるのが簡単でいいと思います(出ちゃったら出血です)。白血球は毛細血管をつくる上皮細胞の隙間からにょろにょろ這い出して組織中に遊走します。

 

 

 

 赤血球に含まれる酸素ヘモグロビンは、毛細血管内で、酸素が少なく二酸化炭素が多い組織中の環境に触れ、ようやく酸素を解離します。放たれた酸素は組織を作る細胞に行き渡ります。毛細血管を進むにつれ、血液は鮮紅色から暗赤色に変化しますが、これは酸素ヘモグロビンの割合が減って、ヘモグロビンの割合が増えるためです。

 

 

 

 さて、動脈は心臓の拍動に合わせて脈打ちながら、組織液をばんばん供給しているはずですが、体液が循環している事実を考えると同じ量だけ静脈に戻されているはずですね。

 

 ところが静脈の頼りないこと。体表に近いところを走っている青っぽい血管が静脈です。触っても脈打っていないし、太いのはぷにぷにしていて、本当に血液を心臓に血を戻す気があるのか疑わしい。

 

 静脈がその名の通り静かなのは、容量が動脈の2倍くらいあるのが理由の一つです。液体は流体だから、風と一緒で圧力の高いところから低いところに移動していきます。だから血液を回収する静脈の血圧は低く保たれていないといけないのです。

 

 また、静脈の内側には、ところどころ逆流を阻止する弁があり、血液が心臓の方向に進む仕組みになっています。

 

 

 さらに、組織液を専門に回収して静脈に導くリンパ管というのが静脈に沿って存在しています。要所でリンパ節という関所のような役割をする構造を作りながら、最終的に鎖骨下静脈という太い血管で血液に合流します。リンパ管に入った組織液をリンパ液と呼ぶので、血液の血漿→組織液→リンパ液と呼び名を変えた体液は、最終的にまた血漿に戻ります。

 

 リンパ管も静脈と同様に圧力は低くないといけないので、リンパ液の流れを保つために逆流防止弁を持ちます。静脈に沿った位置にいるのは、リンパ管も静脈もともに、筋肉が収縮する力をよりどころに流れを維持しているからです。

 

 軽い運動やストレッチをするとリフレッシュするのは、静脈血とリンパ液が心臓に戻るのを助け、体液の循環が良くなるからだということになります。ちなみに組織液が上手に回収されないと腫れや浮腫み、静脈血が回収されにくいとうっ血、逆に動脈血が多い場合は充血になります。

 

 まとめをすると、体液の名前は存在する場所とかかわりが大きいということです。組織中にあれば組織液、血管の中にあれば血液、リンパ液はリンパ管のなかにあるものを指しているのです。

 

 リンパ液は組織液を回収したものだから成分は一緒です。血液の成分はこれに、毛細血管からろ過されなかった赤血球とタンパク質を加えたもの。白血球は免疫が仕事ですので、どの体液にもいます。