行くと時計を買ってしまう気がして我慢していましたが、今日、ふと、村松時計店を訪れました。1970年製、つまりは私と同じ歳の、程度のいい時計はないかな?、という気持ちがありました。
お店に入ると、すぐに三代目が私に気づき、お互いに年頭のあいさつを交わしました。馴染みの客として覚えていてもらえるのは、それでけありがたく、うれしかったです。
すぐに四代目も店の奥から出てきて、最近手に入ったという自慢のコレクションを見せてくれました。
↑今回、四代目から見せてもらった時計たち
まずびっくりしたのは、セイコーファーストダイバーが出てきたことでした。しかも、すごい美品。こんなに状態の良いものにはまずお目にかかれるものではないでしょう。感動しました。
↑セイコーファーストダイバー オリジナル
自分の持っている復刻のSBDC101も悪くはないのですが、こうして比べちゃうとオリジナルの方が断然素晴らしいです。SBDC101よりやや小ぶりで薄く、時計としてのトータルバランスが取れています。ドーム型風防も魅力的で、こうした無駄のない完成されたデザインを、どうして素直に継承しないのか不思議ですらあります。
↑ファーストダイバー復刻 SBDC101
ファーストダイバーのデザインを現代解釈したといっても、いやあ、全然違うな。やはり、同じセイコー製であってもオマージュはオマージュに過ぎず、本物にはかないません。
うん、やはりすばらしい。手に持たせていただき感激です。
ファーストダイバーの裏蓋にあるイルカのマークを見ると、なんと、まだそこにはシールが残っていました。よほど大切にされていたのでしょうね。
↑グランドセイコーGSセルフデーター
次は、グランドセイコーの第二世代、GSセルフデーターです。これも、とても大事にされていたことは疑いなく、文字盤や針の状態が素晴らしいです。50年以上前の時計とは思えない逸品です。
ちなみに自分はGSセルフデーターの復刻クォーツモデルSBGV011を持っていて、機械式腕時計にはまってしまった今でも大事にしています。これを買った頃は、9Fクォーツの素晴らしさに夢中になっており、まさか、機械式にはまっていくとは思ってませんでした。
↑GSセルフデーター復刻SBGV011
四代目は、さらに、シーマスターのギョーシェ文字盤を見せてくれました。
これもすごいなあ。時計本来の質の高さもあるのでしょうが、そこに経年変化による味わいが加わると、一点物としての価値が出てくるという例だと思います。
もっとよく見たい人も読んでいるはずだし、ギョーシェ文字盤をアップで載せておきます。矢じり型のインデックスとアラビア数字の組み合わせが良いですなあ。
シーマスターを見せた時の私のリアクションがいささか小さかったのが不満だったか(いや、圧倒されていただけなんですが)、四代目は、さっと左腕から時計を取り外すと、今や、泣く子も黙ってしまうものを目の前に出しました。
うわー、これは思い切ったものをご購入されましたねえ。最近ですよね。四代目が見せてくれたのは、「無理しても買っておけばよかったロレ時計ランキング1位」のデイトナです。怖くて聞けなかったですけれども、エルプリメロが入ったやつですよね。しかも、T SWISS MADE Tって書いてありますよね。16520のトリチウムですよね。
自分は3針指向が強く、デイトナは買いたい時計の対象外だったのです。ちょっと前まで100万円くらいで手に入ったものもあったのに惜しいことをしました。値上がりしてしまった今では、文字通り、「今さら」感が強く、とても手が出ません(今さらでも買っておけばいいのかもしれませんが)。
「すっからかんになった。」、とは、四代目の口から洩れたつぶやきです。
四代目のご厚意で、初めてじっくりデイトナを見ましたが、文字盤の色と質感がヨダレものでした。マークⅥで合ってますか?
そんな四代目は、最後に、どこからかエクスプローラーⅡのブラックダイヤルを持ってきて見せてくれました。
四代目の目にかなった代物ですから、ただのエクⅡであろうはずもなく、ちょっと文字盤がチカチカしていた見えたのが気になり、あとで写真をよく見て細部を確かめると、文字盤に経年変化が見受けられました。最初は16570かと思いましたが、違います。これはもっと旧い16550です。
この個体は、これから数年で、どんな変化をしてゆくのでしょう。実に楽しみです。
私も16570だったら白文字盤を大事に持っていますが、いくら待っても16550のようなアイボリー文字盤には変化しそうにありません。16550には、買ってからのお楽しみがあるんですなあ。
久しぶりにお店に来たのに、こんなにいいものをばかり見せてもらったからには、手ぶらで帰るわけにはいきませんでした。
時計の魅力に心を動かされ、私は、とうとう5か月ぶりに、「一本」を選んでしまいました。
それについては、次の記事で。