ひと月ほど前から、持病の「やっぱりパネライカッコイイナ病」が悪化しました。ひどい時は精神的に不安定になり、何も手につかなくなるという苦しい状態が続きました。一進一退の闘病生活の末、もう長いこと患っているし、この際根治しようかなと思い立ったのです。
治すためには、「気に入ったパネライ」を手に入れるしかありません。
しかし、パネライは、ルミノールとラジオミールしかラインナップがないのに、これと言うモデルを選ぶのが難しいブランドでありました。
中古市場を見渡すと、サイズは47から40mm、キャリバーもユニタスと自社開発、シンプル3針からクロノグラフまであります。最近では薄型のドゥエなんかがあって、多様です。ステンレスベルトつきか否かという問題も大きいです。
高いものを選ぶのに必要な知識が、十分にありません。いったい、どれがいいんだか。
この際、新品か?、と、安心堂に突入しそうにもなりましたが、たまたま馴染みの村松時計店のHPでルミノールが中古で出ているのに気づき、見に行くことにしました。
久しぶりにお店に行くと、三代目と四代目がそろって、温かく迎えてくれました。
私は挨拶が済むなり、
「パネライを見せてくれ・・・(発病中)」、と、四代目に頼みました。
売れててくれ・・・、と、ちょっと思いましたが、まだやつは残っていました。そうだよね、こんなデカ厚時計を高いお金を出して買うのはよほど身の程知らずのミーハーか、パネライの良さを本当に理解している時計好き。
同じ値段で、グランドセイコーとかロレックスの安い中古が選べちゃいます。
四代目が出してくれたのは、PAM00005という、44mm径のOPロゴ入りルミノールでした。
「OPロゴ」というのは、「OFFICINE PANERAI」のイニシャルで、文字盤と裏ブタにあります。私は最初、このOPロゴにあまり良い印象を持っていませんでした。だって、セイコープロスペックスの「Xロゴ」みたいなんだもの。
セイコープロスペックスの「Xロゴ」というのは、(今のところ)一番高い復刻モデルだけには無いという、悪名高く、セイコーの復刻好きには嫌がらせみたいに受け取られている代物です。
そんなPAM00005が四代目の手のひらに乗って、す~っと、目の前を通り過ぎていったのは、ほんの1秒くらいだったか。しかし、その間に私の中では品定めが終わっていました。
カッコイイ。これ、満足できそうな気がする。
一目見て、高級感、質感、存在感とも◎の採点がついたのです。
「OPロゴ」が、パネライでどんな意味を持つのか分かりませんが、受け入れましょう。苦しい思いを続けるのは、もういやでした。
私は、すでにこの時点ですっかり買う気になっていたので、遠慮せずPAM00005を手に取り、手首に載せたりして眺めました。
やっぱりデカいが、そうでないといけないよなー、とか思っていました。
四代目は、「はし〇さんだったら、お勉強しますよ」、とか、「ロゴが入っているのは珍しいんですよ~」、と、後押ししてくれました。
私はその言葉を受け、時計を買うときは縁を大切にするのが基本だ、このパネライにしよう、と、心の整理がつき、四代目に、
「この時計をお願いします。」、と、告げました。
私の決断が早かったのか、四代目はちょっと驚いたような表情を浮かべると、インド人もびっくりするくらい値引きをしてくれました。
私は満足する一本が手に入って大喜びしていました。
その様子を見て、三代目も四代目も喜んでくれ、帰りになんとお土産を持たせてくれました。島田の駅前、村松時計店のすぐ近くにある、「清水屋本店」の黒大奴と酒まんじゅうです。
昆布で味付けした羊羹で餡子を包んだ、黒大奴。これは、秋色コスモさんの記事でも紹介されていました。きれいで美味しそうなので、心惹かれていたものです。
それをなんと、頂けるとは。私も、自分のブログで紹介して、ささやかながら島田の街の活性化に役立とうと思いました。
家に帰って、さっそくご馳走になりました。最近、抹茶にハマっているので、ちょうどこんなお茶菓子が欲しかったところでした。抹茶の苦みと和菓子の甘さは、よく合いますね。村松時計店のみなさま、本当にありがとうございました。こんなによくして頂いて、なんだか申し訳ないくらいです。
さて、購入した44mmルミノールですが、右の耳元で白い何かが、久々に、
「こんなデカ厚時計、ほんとうに使うの?恥ずかしいかもしれないよ。」
と、苦言を呈してきたので、腕と一緒に写真をとって、黙らせました。剣道で鍛え込んだ私の左腕はパネライにだって負けないのだ。
さて、買った後で調べて、PAM00005は私好みのバックグラウンドを持ったモデルだと分かりました。OPロゴも由来を知って、今では気に入っています。十年来の持病、「やっぱりパネライカッコイイナ病」も、これで根治したはずです。