ATP合成酵素…。
何があったか生物基礎では干されて登場しませんが、「光合成」と「呼吸」の項目では主役かヒロイン級の存在です。両方ともATP合成酵素を回してATPを作り出す物語なのに。
光合成と呼吸を一本の映画に例えると、ATP合成酵素が登場しないことは、「広末涼子扮する雪子が出てこない鉄道員(ぽっぽや)」くらいダメで、もはやストーリーが作れないと思います。
雪子(ATP合成酵素)が出てこないと、何もはじまらないでしょう…、と、思うんだけどな。
次回の記事で「呼吸」を取り上げる予定なので、まず、主役のATP合成酵素を紹介しておきます。理系で応用科目の「生物」を選択した生徒は、ATP合成酵素のイメージをしっかり持てるかどうかは、運命の分かれ道です。
図は、ATP合成酵素がADPからATPを合成しているところを描いた模式図です。皮をむいたミカンの房を2つ重ねたようなものがATP合成酵素で、ぐるぐる回るようにできていて、1回転するとだいたいATPが3分子合成でき、1分間に1万回くらい回転できるそうです。
つまり、こいつがじゃんじゃん回ってATPを量産する反応を呼吸と言っていて、水素イオンの濃度勾配をどのように作っているのかを学ぶことが呼吸の全反応を理解することになります。
だからATP合成酵素をまず理解するのが、学び方として順序だと思うのです。
それなのに、高校の「生物基礎」では出てこないし、「生物」では、呼吸の最後の方に出てきます。鉄道員(ぽっぽや)だったら、乙松駅長が雪の降りしきるプラットフォームに倒れてから、やっと広末(雪子)登場!、くらい遅いです。
何はさておき、まず広末、いや雪子を出せ~。
呼吸(光合成もですが)のところで、 NAD+などの水素受容体は、高校生にとってたいへんな障壁になっております。
ATP合成酵素が働く原動力になる水素イオンの濃度勾配をつくる仕事をしているのがNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)なのだと思えば、NAD+のことを唐突にしゃしゃり出てくる正体不明の物質にしなくてすむような気がするのです。
では、次回は「呼吸」について学びましょう。もしも、次の記事が「呼吸」で躓いている高校生の役に立ったら本懐です。