読書㉜ 『ふぉん・しいほるとの娘 (上・下)』 (吉村 昭著) | そういえば・・・

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橋本商工株式会社の社長のブログです

いやー長かった。

上巻632頁、下巻667頁、計1299頁。

一体いつ買ったのか? も忘れるほど

「積読」の時間も長かった。

 

オランダから日本に派遣された医師・

シーボルトの来日にはもう一つの目的

「日本の国情を探る」があった。

鎖国の日本と貿易を許されていた

オランダにしても、長崎出島のみに

留められていては、日本という国が

どんなだか、わからないことだらけ

であったのであろう。

 

そこでシーボルトは(西洋の)最新の

医術を惜しみなく日本人に伝授する

ことで、やがて幕府の信頼を得、

商館長のみに許された江戸への訪問

に帯同を許された。

 

 

江戸で日本の医者などと交わり

ながら、最大の目的である日本地図

を得んとし、それに成功する。

このあたりから吉村の筆が功名心と

自己の栄達に邁進し、目標達成の

ためには手段を択ばない(嫌な感じの)

シーボルト、という描き方になっていく。

ほとんど間者(スパイ)扱い。

 

 

結果、国禁に触れた罪(日本地図を

国外へ持ち出そうとしたこと)により、

日本追放の憂き目を見てしまうが、

シーボルトには遊女との間にもうけた

一人の娘(稲)がおり、離れ離れに

なってしまうのであった・・・

 

ここまでのシーボルトの記述が

上巻360頁まで。

 

 

 

残りはお滝(元遊女)とその娘・お稲,

そして稲の娘、タダ(タカ、高子)の

3代の女性の話となる。

 

稲は長ずると、父シーボルトと同じ、

医師の道へすすみ、ゆくゆくは

日本の女性で最初の産婦人科の医師

となってゆく。

(明治初期に学制が整備され、いわゆる

国家試験を受けて合格した女子は別に

いるのだが、それはずっと後の話)

 

余談であるが、漫画家の松本零士が

ある機会に楠本高子(お稲の娘)の

肖像写真(下)を見て、

「この女性こそ、自分がずっと思い

描いていた女性だ」と衝撃を受けた、

そうだ。

 

 

下巻巻末に参考文献が記載されて

いるが、歴史に埋もれたこの母娘

の生活を丁寧に浮かび上がらせた

ことに舌を巻く。

舌を巻くのだが、あまりにも長い。

物語に当時の時代背景を織り込む

ことはしょうがないのだろうが、

それがちょっと多すぎ。