石坂洋次郎著の『あいつと私』の映画。
原作は中学生の時、『新潮文庫の100冊』で
紹介されていた(から読んだ)。読んだことは
覚えているが、内容はこれっぽっちも覚えて
いないので、BSで放送がある、と知って
楽しみにしていた。
ところで石坂洋次郎といえば 『青い山脈』が有名。
敗戦に打ちひしがれていた戦後の昭和24年、
映画『青い山脈』、主題歌 『青い山脈』 (藤山一郎
歌唱)は国民に新しい時代の到来を告げる、
一大センセーションを巻き起こした(そうだ)。
そのような原作者の小説の映画化である。
暗くなるはずはない。
映画(昭和36年)の舞台は東京郊外の私立大学。
時代は安保闘争と学生運動が華やかなりし頃。
友人の結婚式の帰りにちょっくらデモを体験
実業家の息子・黒川 三郎(石原 裕次郎)は
ノンポリで学生生活を謳歌していた。
同級生には田園調布のお嬢さん・浅田 けい子
(芦川 いづみ)がいる。二人を中心とした、明るく、
のびやかな青春の日々をテンポの良い、
ユーモアとウィットの利いた会話で描く。
昔の慶応大 日吉校舎
昭和の大スター・石原裕次郎がカッコいい役だ。
学生なのにオープンカーやベンツを乗り回す、
そういうお坊ちゃん役だが、その出生と成長の
過程には影があった。はじめは驚くけい子で
あったが、やがてそれを受け止め、二人は
惹かれ合うのであった・・・
嵐の大雨の中、急接近する二人
前回見た『キューポラ』が貧乏のスパイラルから
辛くも脱出できるかどうか、であったのに対し、
こちらは全く真逆。貧乏ってなんですか?といった
あっけらかんな感じである。
黒川の自宅
黒川の軽井沢の別荘
ベンツで仲間と旅行 慶応ボーイはリッチだなあ
友人の結婚を、胴上げで祝ってあげるところまで
はよいが、最後は受け止めてあげない。
今やったら一発訴訟モノです。
またカフェの名も現在では黒人差別の単語
ですが、時代だからしょうがありません。
ところで『キューポラ』では貧困に負けない、
元気印役であった吉永 小百合が、こちらの
映画ではけい子の妹役で出演している。
俳優は役により演じ分けなければならない
から大変な仕事ですね。
『キュ』では川口市民、『あいつ』では田園調布のお嬢さん役の吉永小百合さん
同様に吉行和子も両作に出演。『キュ』では
工場労働者、『あいつ』では女学生(けい子の友人)。