私のブログ

市議会図書室の充実を

 

議会図書室を考える

 

 などで、議会図書室に関して書かせていただきました。先般、次のような雑誌記事を見つけましたので、全文引用させていただきます。

 

 私がかねてから気になっていた、「行政資料」と「議会図書室」のあり方に明快に書いてくださっています。

 

 全くもって同じような考え方を私は持っております。

 

 お読みください。

 

 

 

 

 ガバナンス 平成28年4月号 ぎょうせい刊 130ページ~

 議会図書室と公立図書館との連携 議会と図書館・図書室②

 山梨学院大学法学部教授・同大学院社会科学研究科長 江藤俊昭

 

公立図書館にかかわる視点・手法

 

 住民が図書館建設の際に積極的に活動することに加え、住民と図書館職員との交流や、住民による図書館支援は広がっている。議員・議会として公立図書館にかかわる視点と手法を考えたい。

 まず、議員として、住民に開かれた公立図書館の建設と運営を個人的にライフワークにしている者がいる。そうでなくても、議員として公立図書館に関心を持つのは当然であり、図書館建設や運営にかかわる住民の要望を積極的に吸収し、一般質問等に活かす必要がある。すぐに実現できなくとも、首長等の見解が議事録に掲載されるからである。

 議会としては、公立図書館を地域経営の核に位置づけて活動すること、総合計画の中に公立図書館のビジョン、ミッション等を明記することにかかわる必要がある。さらに、議会図書室の充実と重なるが、議会事務局の政策法務機能を充実させるには、公立図書館との連携が重要である。そのことで、政務活動費を他の政務活動に活用できることから効率化も実践できる。このことは、議会が公立図書館により関心を持つ機会となる。このように、公立図書館と議会との連携は、政策法務機能の充実だけではなく、逆に議会が公立図書館の重要性を認知し、その充実を進める機会にもなる。

 

公共図書館と議会図書室

 

 議会図書室は、公立図書館・行政資料室・国立国会図書館それぞれの力の活用が必要である(本連載16年2月号)。そのことによって議会事務局の政策法務機能は、飛躍的に高まる。政務活動の効率的な活用とも連結する。議会図書室の充実手法としての連携である。

①公立図書館の力の活用

 鳥取県議会図書室と同県立図書館との連携は広く知られている。議会図書室に入ると正面に書籍コーナーが設置されている。県立図書館から貸与された書籍である。いわゆる「旬」のテーマの特設コーナーを設けることで、議員が一般質問等に活用でき、テーマについて身近に考える一助としている。

 TPP、地方創生など議会事務局がテーマを設定しているが、水木しげる氏の逝去に伴い、県立図書館で行われた水木氏の特設コーナーを議会図書室に開設することもあった。(15年)。議会図書室に司書資格を有する職員(非常勤)はいるが、常駐しているわけではない。その充実が今後の課題だろう。

 また、住民が行政と協働して創り出した伊万里市民図書館(佐賀県)は、鳥取県の取組みを参考に「議員の近くへ資料を出前する」方式を採用し、「旬」な資料を議員控室(議会図書室ではない)に展示している。議員と図書館員が意見交換する中で、市民図書館の資料と司書の力を議会が活用した方がベターだと判断し、この連携を創り出した。

②行政資料室の力の活用

 行政資料室は、地域経営に必要な資料が豊富に集積され、レファレンス機能が十分にあることを想定している。庁舎の一角に、行政資料室・資料コーナーを設置することは、独白の情報公開条例制定、あるいは情報公開法に伴う情報公開条例の制定以降進んでいる。

 鳥取県では05年、県立図書館の分館(図書室)が県庁内に開設された。ここは、行政職員、住民、そして議員の情報収集の場となっている。

 また、日野市市政資料室(東京都)は1977年、日野市立図書館の分館として開設された。行政資料(日野市関連のほか、他の市町村、都道府県、国の動向も)、関連の書籍・雑誌のみならず、日野市に関連ある記事など多様な情報を収集している。同時に、「市政調査月報」(雑誌の目次)、「資料の広場」(新着資料情報リスト)、「市政図書室所蔵日野市の主要な計画・答申・報告書」(過去発行の年表式資料リスト)、新聞記事速報(毎日、日野市に関連ある記事、地方自治に関連ある記事)などを作成するとともに、それらを発信している。議会・会派にもこれらは配布されている。

 なお、庁内のプロジェクトチームヘの継続的な資料提供や、庁内レファレンスも充実している。議員も一般質問等のために資料やレファレンスを活用している。もちろん、行政職員や議員だけではなく、住民にも開かれている(筆者も活用している)。このように、収集と発信の外延が非常に広い。まさに、「住民自治を推進する図書室」である。

 これらの二つの図書室は、それぞれの公立図書館の分館であり、図書館法に基づいて活動している。そのことで、十分とはいえないまでも、図書館としての予算があり、司書も配置されている。また、「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会)を踏まえた活動となる。

③国会図書館の力の活用

 国立国会図書館は、「あらゆる適切な方法により、図書館の組織及び図書館奉仕の改善につき、都道府県の議会その他の地方議会、公務員又は図書館人を援助する」ことになっている(国立国会図書館法21II)。

 具体的には、資料に基づく連携・協力があげられる。年間4000冊の資料が地方議会図書室に、国会会議録が都道府県・指定都市議会図書室に送付されている。また、議会図書室職員を対象とした研修(都道府県及び政令指定都市議会事務局図書室職員等を対象)も06年から行われている。

 議会事務局の充実・連携が強調されて、事務局職員等による研究会が誕生している。その一つでは国会図書館職員がメンバーとなり、研究会で報告などをしている。今後の連携の方向を考える上で非常に意義のあることである。

 

図書館職員・司書との連携

 

 議会図書室と、公立図書館、行政資料室、国立国会図書館との連携を確認してきた。それを実質化するには、議員と図書館職員、とりわけ司書との交流が必要である。議員が、それらの役割を確認する意味もある。「議会図書室の司書は、議会の審議案件や議会運営等、実務に関する基礎知識を身につけていかなければ、即時対応どころか議員の意図をつかむことすらおぼつかない」といわれる。議会事務局職員・議会図書室司書は議員と交流することにより、議会特有の「土地勘」を磨くことが必要である。

 この「土地勘」を磨くことは、議会図書室を支援する公立図書館、行政資料室、国立国会図書館の職員・司書にもいえる。

 日野市市政資料室の分館長は、日頃から心がけ、仲間に呼びかけていることがあるという。それは、予算書の愛読者になろう、庁内の他課・地域企業・団体・NPOとの連携、庁内プロジェクトヘの積極的な参加、地域の講座への参加などである。それらによって、地域課題を的確に把握して、議員を含めた多様な要請に機敏に対応できる能力を養うことになる。

 

議会事務局・議会図書室の充実

 

 とはいえ、議会図書室本体の充実がなければこれらの連携も活用できないことは強調しても過ぎることはない。連携の仕方もわからない議会事務局では、連携先の力を十分には活用できない。

 議会図書室について、「設置の義務付けを緩和すべきだという意見もある」そうだ。筆者は、議会図書室自体が主題的な議論の対象になっていないこともあってか、その議論は聞いたことがない。連携による議会図書室機能の強化は必要だが、それが当該議会に議会図書室がなくてもよいことにはならない。議会図書館と市政資料室との併設は考慮されてよいが、その場合でも、議会図書室の設置は条例に明記すべきである。「住民自治の根幹」であるとともに、第一級の争点情報は議会に蓄積されるからである。議会に身近な議会図書室があってこそ、さまざまな連携は活きる。

 住民自治によって図書館は創られ、図書館によって住民自治は進化・深化する。議員・議会として図書館にかかわっていかなければならない。