微博(ウェイボー) | 蘇州日記

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2015年4月から蘇州に単身赴任しています。蘇州での生活をブログに書いてる人が大勢いて、赴任前にとても参考になったので、真似することにしました。

中国での有名スマホアプリの第一弾として微信を紹介したので、第二弾には当然ながら微博(ウェイボー)を取り上げないわけにはいきません。

この二つは名前が似ているし、中華圏でもっとも利用者数が多いアプリですので。





とは言え、微博を運営している新浪(シンラン)という会社は、三大ネット企業(腾讯、阿里巴巴、百度)には入っていません。

中国の企業の中には社名のピンインを少し変えて英語っぽい愛称を付けている会社が少なくありませんが、この新浪もSINAという愛称を持っています。

これが支那という日本による戦前・戦中の中国に対する呼称を想起させるとのことで、批判されたりすることもあるそうです。



微博がどういうアプリかというと、要するにFacebookみたいなもんです。

写真や他サイトの記事に自分のコメントを付けたものを投稿してみんなに読んで貰うというものです。

例えば、下の例が僕がフォローしているグラビアアイドルの夏瑶(シャーヤオ)さんの投稿。





「30元(約540円)で買った服」と書いてあります。

彼女が雲南省のシーサンパンナ・タイ族自治州に旅行した時の投稿なので、そちらでは衣服が安いのでしょうね、

サムネールの写真は頭が切れちゃってますが、タップするとちゃんと写真全体が表示されます。







Facebookと微博にはひとつだけ違いがあり、Facebookが「友達」というシステムで繋がった人同士に投稿を見せ合うのがメインの使い方であるのに対し、微博は広く誰にでも見せるのがメインの使い方です。

検索機能やハッシュタグによって、ある特定の話題についての投稿を幅広く読むことができます。

自分のタイムラインにある人の投稿が常に表示されるようにするには、相手の承認を要する「友達」ではなく、一方的な繋がりである「フォロワー」によって実現します。



この特徴によって、中国人は一般に微信の朋友圏と微博を次のように使い分けているようです。

微博に投稿するのは、広く多くの人に自分の投稿を見せたい人です。

一般の人は微博は読むだけで投稿はせず、面白い投稿に出会ったら、それを微信の朋友圏(またはチャット)に転載して友達に知らせます。

一般の人が「○○という店で食事をしたら美味しかった」というような日本だったらFacebookに載せるようなパーソナルな投稿をする時は、微信の朋友圏に投稿します。



微博という言葉は本来は「マイクロブログ」という意味の一般名詞で、新浪の専売特許ではありません。

実際、腾讯微博や人民微博など、他社による同様のサービスもあり、新浪のサービスの正式名称は「新浪微博」です。

しかし、新浪微博が圧倒的なシェアを持っており、一般に「微博」と言ったら「新浪微博」のことを指します。



なぜ、新浪は圧倒的なシェアを持つに至ったのか。

そこには中国ならではの事情があります。



新浪微博が誕生したのは2009年ですが、その時点で中国には既にたくさんの微博がありました。

そして、こういうサービスが流行れば当然のことですが、中国共産党に批判的な書き込みをする人が出て来ます。

当時はグレートファイアウォールによる検閲システムが今ほど洗練されておらず、批判的な書き込みが目立つ微博は、微博ごと閉鎖されてしまうという状況でした。

そんなことでは微博を提供する会社は安心してサービスを提供することができませんし、ユーザーもいつ閉鎖されるかわからない微博に安心して投稿することはできません。



この状況に目を付けた新浪は、「中国当局による検閲に積極的に協力する微博」というコンセプトで新浪微博を立ち上げました。

グレートファイアウォールの監視員と新浪微博のスタッフが連携し、監視員が見つけた問題投稿は速やかに削除し、問題投稿の多いユーザーに対してはアカウント削除を行うという運営方法を政府に提案したわけです。

この仕組みによって、どんなにたくさん問題投稿が出ても新浪微博そのものはサービスが継続できることになり、ユーザーが安心して使うことができる安定した微博が誕生したわけです。

この新浪のやり方は、その後の中国ネットにおける、人々が投稿するタイプのサービスの基本形になりました。



この、一見しっかりしているように思える検閲システムですが、じつはつい最近まではそんなに実効性は伴っていませんでした。

問題投稿が投稿されてから削除されるまでだいたい24時間くらいかかり、その間に微信で転載されまくって、中国の全ネットユーザーに行き渡った頃にようやく削除されるからです。

このようなザルでしかない検閲の仕組みで新浪が今の地位を得たという事実は、中国の官僚組織のいい加減さをよく表しています。

情報当局は本気で情報統制をしたいわけではなく、政府中央部に対して「ちゃんと情報統制してますよ」と言いたいだけなのでしょう。



しかし、最近になってようやく「それではマズイ」という話になったようで、投稿内容によっては極めて短時間のうちに削除される例も出て来ているのだそうです。

これはネットスラングで「秒殺」と呼ばれているそうです。

僕自身はそういう例を目撃したことはなく、24時間くらい経ってから消される投稿しか見たことはないのですが、秒殺される投稿はよっぽどヤバいんですかね?


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