『養生訓』 頓死の人への灸(巻八50) | 春月の『ちょこっと健康術』

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「一切の頓死や夜うなされて死んだ場合、足の親指の爪の甲の内側で、爪から離れること韮葉(にらは)ほど前に、五壮か七壮の灸をすえるとよい。」


頓死すなわち急死を起こす病は、「急死を防ぐ」 の中にリストされていました。中でも食積による急死については、「中年からの食事」「少食の効用」「食後の急死と過食」 と3度にわたって注意喚起されています。


突然卒倒して人事不省に陥り、手足が氷のように冷たくなる病を、厥証(けつしょう)と言います。急死(突然死)に至るような重篤な場合、それを屍厥(しけつ)と呼びます。


屍厥の治療に使うツボとして、『鍼灸大成』という古典に載っているのは、

列缺(れっけつ) … 手首近くにある肺経のツボ

禾りょう(かりょう) … 人中 の両脇にある大腸経のツボ

厲兌(れいだ) … 足の第2指の爪甲の外側にある胃経のツボ

隠白(いんぱく) … これが益軒先生のおっしゃる足の親指の爪甲の内側にある脾経のツボ

攅竹(さんちく) … 眉の内端にある膀胱経のツボ

通天(つうてん) … 百会 の左右斜め前にある膀胱経のツボ

魂門(こんもん) … 肝兪 の外側にある膀胱経のツボ

僕参(ぼくしん) … 足の外踝の後ろ下方にある膀胱経のツボ

金門(きんもん) … 足の外踝の前縁直下にある膀胱経のツボ

湧泉 (ゆうせん) … 足裏にあるツボ

とあって、おそらく原因によって使い分けたのでしょう。


『鍼灸大成』の隠白の項を引用すると、

足大指端、内側、去爪甲角、如韭葉。脾脈所出、為井木。『素註』鍼一分、留三呼。『銅人』鍼三分、灸三壮。 主、腹脹、喘満、不得安臥、嘔吐、食不下、胸中熱、暴泄、衄血、屍厥、不識人、足寒、不能温、婦人月事、過時不止、小児客忤、慢驚風。」とあります。

「韮葉(にらは)ほど」という表現も合わせて考えると、益軒先生がこの『鍼灸大成』を参考にされたことがうかがえます。「韮葉ほど」は、ほんの少しという意味です。


隠白の位置は、右足の親指で↓ここ。ね、ほんの少しでしょ?

春月の『ちょこっと健康術』-至陰


で、この場合は頓死してしまった人じゃなくて、突然倒れて「死んじゃったの?」という人に対してのお灸であって、亡くなってしまった方を生き返らせるわけじゃありませんね。


『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』


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