「今の世に、天枢、脾兪などに、一度に多くの灸をすれば、気が上がって、痛みが耐えがたいといって、一日に一~二壮、毎日灸をして百壮に至る人がいる。
また、三里に、毎日一壮ずつ、百日間続けて灸をする人もいる。これまた、時気を防いで、風を退け、のぼせを下し、鼻血を止め、眼をはっきりとさせ、胃気をひらき、食を進ませるので、もっとも有益であるという。
しかし、医書に、こうした方法を述べているのを、いまだに見たことがない。それでも、この方法を試みて、効果が得た人も多いという。」
天枢は、おなかの調子をととのえるツボ であり、便秘に効くツボ でもあります。脾兪は、脾胃をととのえるツボ であり、胃を丈夫にする六つ灸 のツボのひとつです。
また、三里とは、足三里のことで、養生保健のツボ であり、気を補うツボでもあり、 転倒予防のツボ としても使えて、もちろん脾胃をととのえるツボ のひとつでもあります。
1日に1~2壮、毎日すえる。益軒先生は、医書にそういうやり方は載っていないとおっしゃっていて、確かに古典にはないかもしれませんが、江戸時代にはずいぶんと流行っていたようです。お伊勢参りに出かけるまでの100日間、足三里に灸をすえたと言われてますから。
『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』