薬をのまずして、おのづからいゆる病多し。これをしらで、みだりに薬を用て薬にあてられて病をまし、食をさまたげ、久しくいゑずして、死にいたるもまた多し。薬を用ることつつしむべし。
薬を飲まなくても、自然に治る病気は多いものだ。これを知らないで、むやみに薬を用いて、その薬に当てられて病気を悪化させ、食欲をなくして、長いこと回復せずに、死に至ってしまうこともまた多い。薬を使用することには、慎重でなければならない。
「発熱は戦いの印」 でも書いたように、解熱剤を使わないほうがカゼは早く治ります。薬は、飲めば治る、というものでもないのです。薬は、身体が治ろうとするのを助けるものであって、それ自体が病気を治すものではないのですから。使い方次第では、益軒先生もおっしゃるように、毒にもなるものなのです。だからこそ、「脾胃を補うのは薬より食事で」 。
そして、お医者さんも、治す人ではなくて、治るのを助けてくださる人ですね。治す人は、あなた自身です。本来身体は、何かあれば、必ず自ら治ろうとします。その力を引き出すことが大事。やたらと薬を使って、その力をそいでしまってはいけません。