「刺身や鱠(なます)は、人によってはよくないこともあるので、よく考えなければいけない。酢の摂り過ぎを控えるべきである。冷え性の人は、温めて食べることだ。
鮨は、老人や病人は食べてはいけない。消化しにくいからである。とくに未熟なものや、熟しすぎて日のたったものは、食べてはいけない。海老の鮨は毒がある。うなぎの鮨は消化しにくい。みな食べてはいけない。
大きな鳥の皮や魚の皮の厚いものは、かたくて脂肪が多い。消化しにくいので、食べてはならない。」
ここでいうなますは、薄切りの魚肉を酢にひたしたものを言っているようです。刺身やなますが人によってはよくないというのは、脾胃の弱い人を指していることは、これまで『養生訓』を読んでこられた方はすぐわかりますね。
酸味は、『養生訓』の「塩酢辛を少なく」 で解説したように、摂り過ぎると肝が強くなり過ぎて、脾胃を弱めてしまいます。
刺身は生もので冷たいものですから、「夏は生もの・冷たいものに注意」 や「脾胃の嫌う十三品目」 にもあったように、脾胃にとっては負担となるものです。
鮨となると、酸味+刺身ですから、ただでさえ脾胃の弱っているご老人や病人にはご法度というわけですね。硬くて脂っこいものも同様です。
『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』
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