今思うと...


そんな単純な話な訳ないと分かるけど

至って単純な私は、

※これより敬称略※

この物語は岸田鈴(相武紗季)と言う女の子が

四万十太郎(長瀬智也)に見守られて

国民的歌手へと成長していく...


その過程で起きた様々な出来事の

ストーリーだと思っていた。







ここからはネタバレ部分があります

気をつけてね!










最終話まで観て初めて分かる

『歌姫』と言うタイトルの意味。

太郎がジェームス(大倉忠義)だけに

打ち明けたまだ見ぬ娘を思う気持ち。


未見の方は何が何だかですよね。




ちなみに今までに書いた

『歌姫』の感想などは

こちら↓にあるので

お時間のある方は

是非にご覧いただけたらと思います...











10話でロシア(メリーの恋人)に

捨てられたと思い込み

「死んでしまいたいちや」と

絶望するメリー(遠山景織子)を

岸壁から遠ざけようとした時、

手から落とした懐中時計を

掴もうとして太郎は海に落ちる。


翌日か数日後かに

岸辺に打ち上げられて

鈴と勝男(高田純次)に助けられ

その場で一旦気がつくのだが、

感情のない目で鈴を見つめ

同時に特攻隊の記憶が蘇り

我を忘れて叫び続け...


その瞬間全てを悟った鈴は

もうどうする事も出来ないと涙を流し、

勝男は目の前の光景を信じたくなくて

「たろおぉぉぉーーー!!」と

絶叫する。

このシーンは何度観ても

胸を抉られ苦しくなる。


そして美和子(小池栄子)に見守られ

再び目を覚ました時、

及川勇一だった頃の事を教えられた。

話を聞くその佇まいは

太郎ちゃんではなく勇さんで

もう土佐清水での事は

思い出せないんだろう


...と思ったけど

本当は何もかも全部覚えていたのだ。




鈴に別れを告げ

自分の荷物を取りに行った映写室で

ジェームスに声をかけた時は、

「昔の記憶も今の記憶も全部覚えちゅうき」と

 いきなり話し始める。

びっくりすると同時に

鈴の事を心配するジェームスには

自分には〝さくら〟と言う

一人娘がいると知ったから

全てを忘れたフリをするのだと打ち明ける。




ここで余談だが

智也くんは〝さくら〟って名前に

縁があるね。

・ムコ殿(2001)

ヒロイン竹内結子役名

・俺の家の話(2021)

ヒロイン戸田恵梨香役名

・歌姫

四万十太郎の娘 ジュディ・オング役名

余談終わり





「歌の上手な娘で

歌手になって有名になって

天国のおとんに自分の

歌声を聞かせたいと言うたがやと」

「今まで父親がおらんで

寂しい思いしよった娘がおって

放ったらかしにはできんやろ

わしはこれから

娘のために生きるがじゃ

わしの惚れた腫れたなんぞ二の次じゃ」

「わしはこれから

歌姫になりたい思っちゅう

さくらのそばにおってやるがじゃ

これからずっと...

見守ってやらないかんがじゃ」

「わしの姫さんはまだ見ぬ娘ぜよ」

...と

涙を流しながら話すのだ。


その表情は太郎でも勇一でもなく

一人の父親の顔をしていた。





この映写室のシーンの前に、

メリーが恋人のロシアと共に

オリオン座を訪れ

捨てられたと思ったのは

自分の早とちりだったと、

自分のせいで太郎が現在の

全てを忘れてしまったのなら

本当に申し訳ないと

詫びるシーンがある。

〝子どもができたから〟逃げたと

思っていたロシアは

〝子どもができたから〟

東京の両親に結婚の了解を

貰いに行っていたというのだ。


ここでのロシアのセリフ

「ここに(お腹に)

僕の子どもがいるんですよ子どもが!

子ども捨てる人いないでしょ

そんな酷いことする訳ないでしょ!」

このセリフは太郎がジェームスへ

打ち明けた気持ちとリンクしている。


太郎に子どもがいる事を

偶然知ってしまっている鈴は

太郎が昔の記憶を失ったと聞いて、

更にロシアの言葉を聞いたこの時に

99%太郎との未来を諦めたんだと思う。





10年間を過ごした土佐清水の人達には

全てを忘れたフリをして

楽しかった記憶の全てを

自分の中に押し込んで

バスで涙を流す太郎。




ジェームスには

「わしの姫さんは娘のさくら」

と言ったけど、

きっと心の中では

鈴の事も永遠に姫さんなのだろうな。


涙を流しながら振り返りたくても

絶対振り返らない太郎は

まっこと男の中の漢だった。




最終話のシーンで初めて明かされる

『歌姫』と言うタイトルの理由。

こんなに深かったのか...

ある少女のサクセスストーリー

等というありがちなものではなかった。




このお話もできることなら

ぜひ配信して欲しい。

当時視聴率が激悪だったけど、

(数字までは覚えてないし

調べたくないw)

みんなに観てほしい。

前半のノリが苦手な人も

是非我慢して(言い方)

最後まで観てほしい。



そう強く思うドラマなのである。