猿若祭二月大歌舞伎 昼の部 | 歌舞伎好きの手帖

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主に歌舞伎観劇の感想

今年は十八代目の十三回忌とのこと。あの方の華やかで情の濃い御芝居が懐かしい。

 

「新版歌祭文 野崎村」

久作娘お光(中村鶴松) 丁稚久松(中村七之助) 油屋娘お染(中村児太郎) 百姓久作(坂東彌十郎) 油屋後家お常(中村東蔵)他

 

鶴松さんのお光は感情表現がとても自然。お染への嫉妬も、久松に自分への愛情がないことを悟った時の悲しみもストレートに伝わってくるいとおしい存在だった。よい供養になったと思う。

 

「釣女」

太郎冠者(中村獅童) 大名某(中村萬太郎) 上臈(坂東新悟) 醜女(中村芝翫)他

 

獅童さんと芝翫さんが若干悪ノリにすぎるようにも思うが。

 

「籠釣瓶花街酔醒」

佐野次郎左衛門(中村勘九郎) 兵庫屋八ツ橋(中村七之助) 兵庫屋九重(中村児太郎) 下男治六(中村橋之助) 兵庫屋七越(中村芝のぶ) 兵庫屋初菊(中村鶴松) 遣手お辰(中村歌女之丞) 女中お咲(中村梅花) 若い者与助(中村吉之丞) 絹商人丈助(大谷桂三) 同丹兵衛(片岡亀蔵) 釣鐘権八(尾上松緑) 立花屋女房おきつ(中村時蔵) 立花屋長兵衛(中村歌六) 繁山英之丞(片岡仁左衛門)他

 

勘九郎さんの佐野次郎はかねて観たかった御役だった。劣等感・嫉妬からくる怒りの表現が切実でその分救いがないが、似たような御役(縮屋新助・薩摩源五兵衛)への期待をも膨らませる出来栄えだった。七之助さんの八ツ橋も、彼の持ち味を生かしたよい出来だった。追善狂言らしい豪華な配役にも満足した。中では松緑さんの釣鐘権八が意外性もあって印象に残った。この方にも佐野次郎左衛門を演じてほしいんだけどね。

 

悪いのは誰なのかと毎回思う。やっぱり八ツ橋が一番悪いと今回確信する。この人は自分の手練手管を過信したのか知らないけど、今後起こりうる展開について真剣に考えなかったのがいけないと思う。