これまでのお話
新築戸建て見学をして、私達の提示した条件に合いそうな家は たったの1軒 だった。
そもそも家を買うと決めたのも、ほんの数日前だ。
買うと決めたこと自体も、思い付きだし・・・
実際の戸建てもまだ6軒しか見学していない
図面も10軒分くらいしか目を通していない
なのに、私達の心はもうそこに決まりかけていた。
だって、たった1軒しか 妥協できる物件が見つからなかったんだもの
2023年までは家の購入者に色々優遇措置がされており、その措置もその年の年末で終了しようとしていた。
紹介された戸建ての種類や数も豊富だったが、その優遇措置を利用する人も多いのか、家々は順調に売却されている印象だった。
その時はチラシには載っていたのに、営業さんが案内してくれなかった物件もある。
私が営業さんの手元にあるチラシをちょっと垣間見ながら、「それは・・」と問うと、「あ、これはもう・・・」と、言葉を濁す場面もあった。
おそらくそのチラシの物件は、もう購入者が決まっているのだろう。
そういった営業さんのしぐさを思い出すと、益々気持ちが焦った
やっぱり一番私達の条件に近い、あの物件に決めてしまった方がいいと感じた。
そこで、私は夫と相談して営業さんに電話する。
次の祝日に、仮契約をしたい、と。
ただ、仮契約の前に、もう一度よくその家を見たかった。
問題の見落としがないように・・。
それで、勤労感謝の日、私達はまず目的の戸建てをもう一度見学してから、納得したら仮契約をすることになった。
まず、午前中にもう一度見学する。
見学の際はビデオも撮った。
その時私はふと、「地鎮祭とかって、建売でもやるのかな」と心配になり、営業さんに訊いてみた。
「地鎮祭はしたのですか」
と。
すると営業さんは答えた。
「しっかりした地鎮祭はしていませんが、お清めはしています。」
と。
そうなんだ。
うーん、まあ、いいんじゃないかな、と思った。
建売にそんなに求めても仕方ない。
実家はあんなにお祓いした私だったが、建売には妥協しようと思った。
この家が建つ前は何だったのかも調べた。
以前は空き地で、その前は畑だったこともあるそうだ。
それも、もう一度確認してみた。
すると、やはり土地には特にいわくもなく、大丈夫そうだった
ハザードマップも前もって確認してあるが、改めて営業さんにも確認する。
大丈夫そうだ。
真っ白ではないが、1000年に一度の洪水以外は問題なさそうだった。
1000年に一度の洪水でも、家の一部が浸水するくらいのレベルだった。
環境も見てみる。
周りのお宅は庭も綺麗できちんとした方が住んでいる雰囲気だった。
大丈夫だと思う。
ただ、ひとつちょっと気がかりなことがあった。
その家の道路に面している西側の壁に、ゴミ捨て場があったのだ。
これは・・・
ちょっと嫌だな、と思った。
でも営業さんが言う。
「これはうちが分譲しているほんの数軒のお宅しか使っていないので、荒れませんしキレイですよ。」
と。
確かにキレイに使われていて、清潔だった。
そうか・・・。ま、仕方ないか、と納得した。
うん。大丈夫だと思う。
ここでいいと思う
そして私達は、家を買うと決めてから
わずか4日後の午後、仮契約をした。
一部の資金をその会社に振り込んだ。
でも、ね~~
本当にそんなんでいいのかと思うよね~
私達もちょっと急ぎ過ぎかとは思ったんだ~
でもね~、なんか時間もなくてね
いいわけだけどね~
でも、親族が誰も反対しなくてね~
あれよあれよという間にこうなってしまったというか・・・。
私達もこんなに勢い余ったことはなくて、仮契約の後も興奮気味だったけれども・・・。
それでも、子供たちに打ち明けるのは気まずいっていうか、照れ臭いっていうか、なんだか言いにくかった。
でも、やっぱり嬉しくて舞い上がっていたので、夕方になって夫が誇らしげに家族LINEにコメントする。
「おばあちゃんと暮らす家を、今日仮契約してきました。」
すると、子供たちの反応は、最初はさすがに驚いた様子だったけれども、割と呑気で、
「いいじゃん、いいじゃん」
「やったぁ~」
みたいな感じで盛り上がっていた。
なので、私達も安心した
しかし、少し時間をおいてから、
最近家を建てたばかりの、冷静で計画性のある長女がコメントを返してきた。
「ちょっと、確認したいことがあるんだけど・・・。」
私は、ドキッ とする。
そして、思う。
「そうだよね~。こんなに急だもの。確認したいこと、きっとあるよね~」
と。
私達は、家を買うっていう重大事件をたった4日で仮契約までしちゃって・・。
なのに、子供たちを除く家族、親族、みんなが「いいんじゃない 」なんていうサクッとした同意で賛成してくれて・・。
で、条件に合いそうな家が、たった1軒都合よく見つかって。
なんか、トントン拍子過ぎて、ちょっと怖かったんだ。
だから、長女からの「確認」メールで立ち止まることができて、ちょっと安心したような気持になった。
長女よ、問いかけてくれて、ありがとう。
で、なんだろ。
いったい何を確認したいのかな
私達は家を買うことを決めてから暴走していたので、ここで少しブレーキをかけてくれた長女の存在に、ちょっとほっとしたのだった。