アパートの内見でがっかりした私たちは、昼食を済ませたラーメン家の駐車場で、うちの賃貸マンションにしつこくチラシを入れ続けてくれた会社に電話した。
その会社の受付に対して私は唐突に言った。
「あの～、なるべく早く、新築戸建てを現金一括で買いたいんですけど、これから見学とかできますか
」
」現金一括払いで戸建てを買うということを伝えることで、私は相手に本気度を見せたかった。
アラカン夫婦と90近い老女が家を買うのである。
「お金はありますよ。」
ということを見せておかないと、あしらわれそうな気がした。
歳をとってから、あしらわれることが多いので、これ以上無駄に傷つきたくなかった。
今回、家を買うにあたり、住宅ローンを組むことも考えた。
しかし、母と夫の双方からの出資なので、現金一括払いの方がいいという結論になり試算する。
住宅ローン手数料
住宅ローン金利分
団体信用生命保険料の合計
の３つを足したものから、
住宅ローン控除
（２０２３年末までの申し込みで有効）
を引いたところ、ローンは組まず、現金一括払いの方が安くなることが分かった。
それに私達は住宅ローンに懲りている。
数年前に売却したマンションのローンも、バブルの頃だったので金利がとても高かった。
若い頃は無知だったので、最初の１０年は金利だけを払うヤバいローンを組んでしまっていた。
そのため、借りた元本は全然減らなかった。
途中借り換えをしたが、手数料が結構かかり、とても損をしたイメージだった 
ローンの支払金額は最初こそ家賃並みだったが、マンションの価値がどんどん下がって家賃も下がっているのに、ローンは相変わらず高くて、払い続けるのが辛かった 
ローンを組んでいる間、２回ほど銀行の残高が不足したことがあるが、その督促状的なお便りがなかなか厳しい文面で、焦ったし怖かった 
つまり、ローンはもう嫌なのだ 
それで私達は、現金一括払いで戸建てを買うことに決めた。
ここで幸いしたのが、私達がマンションを売却していたことと、実家じまいが終わっていたことだ。
ドル建て一時払い終身保険にも申し込まなくて良かった。
申し込んでいたら身動きが取れなかった。
今回、マンションと実家の売却利益と私達の貯金を合わせれば、新築戸建てが現金で買えそうだった。
私達が払える資金の上限を示して、その会社に新築戸建ての見学を申し込む。
私達の戸建ての条件は次のようだった。
まず、
１階に６畳以上の母の部屋があること。
その時住んでいたマンション、アパートと近いこと。
支払える上限金額で買えるものであること。
危なっかしい私達は、新築戸建ての見学を申し込んだだけで、すっかり舞い上がる。
なんとなくヤバい物を買おうとしているみたいで、子供たちには打ち明けにくかった。
「何かを決断をする時は一度立ち止まって、ご家族に相談しましょう。」
って、詐欺に合わないようTVでも散々訴えかけているのに、私達３人はなんとなく子供たちに相談するのが、やましいような気持ちになっていた。
ただ、私の姉と弟、夫の母と妹には相談した。
なんらかの反対があるのかと思ったが、すんなり賛成してくれた。
そうなのだ。
もうこれから揉めたって、私達には時間がない。
毎月、住居のために２世帯で２０万円は消えているのだから、３ヵ月先延ばしにすれば６０万円消えていくのだ。
それだけ家を買う資金が減ってしまうのだ 
だから、親族の賛成はありがたかった。
２０２３年、ウクライナとロシアの戦争が長引き、世界中でインフレが加速していた。
建築資材も高騰し始める。
その上、２０２３年、１０月、イスラエルとガザ地区の戦争勃発で、さらにインフレが加速し、益々資材の価格が高騰するともいわれていた。
コロナの終えんで、世の中はリモートワークから通常ワークに戻りつつあり、新築戸建てバブルも翳りを見せていた。
そして、働き方改革による建築業界の２０２４年問題。
戸建てを買う状況は、どんどん厳しくなっていくと思われた。
もう、買うなら今（２０２３年１１月～１２月頃）なのだ
もう、あの２０数年モノのエアコンの付いたアパートは借りたくない。
でも、母は複視でケアハウスに送るのは不憫だ。
マンションを売るのも、
実家を売るのも、
家を買うのも、なんか、すごくパワーがいる
ここ１年くらいで、老けたんじゃないかとも思った
だけど、私達には時間がないのだ。
なんで、もっと前から準備しておかなかったんだろう
ホント、こんなにハラハラしないで、
もっと人生優雅にいきたい 
というわけで、私は電話口で叫ぶ。
とりあえず、新築戸建て、
現金一括払いで 
