これまでのお話 実家処分を決意するまで     

 

母が私達の賃貸マンションの約2km離れたアパートに越してきたのは、2年前の夏の終わりだった。

家具や家電を準備して、母は88歳で新しい場所でひとり暮らしを始めた。

 

母の今回の引っ越しで、買って良かったと思う家電や家具は次の通りだ。

 

1. ソファーベッド 

私が母のアパートに泊まる時、気楽に寝具の準備ができて場所も取らない。

母のひとり暮らしは一時的と思われていたので、安めの物を購入した。

 

 

2. 電気ケトル   

母はやかんでお湯を沸かしていたが、新しいコンロを使うのが大変そうだったので、電気ケトルは役に立った。

 

3. ダイニングこたつ 

椅子に座ってこたつに入れるので、高齢者にはとても良いと思う。

椅子も手すりの付いたものにした。こちらの椅子はとても快適で私も気に入っている。

このこたつは大いに役立った。

今もダイニングテーブルとして使っている。

 

 

 

 

実家から持ってきたものは、

ベッド、仏壇、テレビ、DVDレコーダー、祖母の形見の鏡台、わずかな食器と鍋、衣類といった感じだ。

 

母が引っ越してきてから、私はただただお弁当を作って毎日通い、洗濯物を回収して洗濯し、週に数回掃除をした。

仏壇の花を定期的に変え、お茶やご飯をそなえた。

 

最初の頃はお弁当を昼と夜、2食届けていたけれど、母が昼のお弁当を夜も分けて食べるので、夜は大丈夫だと言ってくれた。

それは私にとってとても精神的に楽だった。

週に何日かの夕食は、うちに来てもらったり、夫と3人で外食をした。

 

ゴミ捨て場はアパートの近くにあったけれども、母が分別の仕方や捨て方が分からないと言うので、私がゴミ捨て場に出していた。

時々は捨てそこなって、母のゴミを自宅に持ち帰り、自分たちのゴミと一緒に出すこともあった。

 

88歳の母は、もう鍋でお湯を沸かす事さえ怪しくなっていた。

実家では、以前のガスコンロを使い慣れていたので気楽に料理もできたが、すっかり新しくなった今どきのコンロは、母にとって使うことが少し難しいようだった。

母が新しいガスコンロを使うことは、私も心配だった。

だから賃貸アパートのオーナーたちも、そりゃ高齢者にアパートを貸すのを渋るんだろうな、と思った。

 

母は散歩がしたいようだったが、見知らぬ土地で迷子になったり転んだりしても困るので、外出はしなかった。

私は時々、母を誘い出して買い物やランチに行った。

 

2年前の春、私は就職に失敗しているが、今思えばなんだかこうやって母の世話をするために、ずっと無職でいたのかもしれない。

 

 

今も働きたい気持ちがないわけではないけれど、アラカンの新人て、どんな扱いになるんだろうと思うと、怖くてなかなか就活する気になれない。

そういった意味で、母の世話をすることは、私が無職でいることの都合の良い言い訳にもなっているかもしれない。

 

母の世話を始めた頃は、「私の時間はどこに消えるのだろう。」なんて少し虚しく思っていた。

しかし今は、母の世話をすることで、生活も食事も規則正しくなるので、結局は自分のためになっているように思う。

 

母が新たにひとり暮らしを始めてから、私は時々実家に帰り、実家を少しずつ片付け始めた。

実家を放置しておけなくなったトラブルについては、順を追って書くことにする。

 

また、母は新しい市で再び要介護・要支援認定を受けることになった。

そうしてデイサービスデビューすることになる。