「渡くんの××が崩壊寸前」7巻はある意味、「渡直人の巻」とも言えるのでしょう。
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④7巻関連記事
6巻第6話において、館花紗月に甘えてしまう自分を認識し、そして、石原紫の母親である石原美桜の問いかけを思い出し、自分が「子供」であることを自覚した渡直人は、自立した「大人」を模索し始めたのでしょう。渡直人が抱く「焦り」は、そんな彼の成長の痛みでもあるのでしょう。そして、その果てに渡直人はようやく彼が「一番大切とするもの」を再認識します。
「渡直人の心境の推移について」においては、6巻第6話に端を発する渡直人の「大人」への模索の過程について考察するものとします。
今回は7巻第2話の終盤部分について考察します。
以降において、作中の記載は青字で、個別的な考察は赤字で記載させて頂きます。
1バイト先での梅澤真輝奈の苛立ち(7巻第2話)
バイト中、梅澤真輝奈は前日に痛めた左足首を気にしていた。店長や女性店員から色々と仕事を言いつけられる渡直人の様子を見、梅澤真輝奈は「全部先輩が悪い」と八つ当たりのように怒りを覚えてしまう。
(八つ当たり(7巻第2話))
[考察]
不機嫌になりつつある梅澤真輝奈の様子が描かれているシーンです。このシーンでの梅澤真輝奈の不機嫌の要因は、主に以下の4つがあるものと思われます。
理由その1:渡直人の現在の態度に対する違和感
梅澤真輝奈はこの前日から、渡直人の態度に違和感を抱いています。
(前日に感じた違和感(7巻第2話))
上述のシーンにおいても、訝しげな目付きをしており、そして「いつも淀んでいる先輩が、最近妙に元気だから」と述べてもいます。梅澤真輝奈の認識としては、渡直人の態度は基本的にあまり活発なものではない、いわば「辛気臭い」といったものなのでしょう。
(基本的な認識(6巻第1話))
この、渡直人は仕事を頼まれる度に「はい!」、そして「今すぐ!」と、愛想の良い返事をしています。梅澤真輝奈は渡直人のその態度に改めて違和感を抱くと共に、彼女の普段のペースも乱されつつあるのでしょう。
理由その2:前日の渡直人の態度への反感
前日、梅澤真輝奈は渡直人に対し、婉曲的ではありますがデートを持ち掛けます。しかしながら渡直人は梅澤真輝奈の以前の発言(好きな人がいるという趣旨)を解さない上に、「恋に部活にバイトに頑張れよ!」と、爽やかな態度で彼女を励まします。
(励まし(7巻第2話))
その態度に梅澤真輝奈は激しく「イラッ」とし、そしてゴミ箱を蹴るという形で、その苛つきを発散させようとします。
(発散(7巻第2話))
この場面においても痛みと共に、前日に感じた苛つきもまた思い出し、痛みの要因を作り出した渡直人へ反感を改めて意識してしまったものと思われます。
理由その3:足の痛みによる情緒の不安定化
あくまで一般的な話ですが…人が普段とは異なる感覚を抱いていたら、やはり集中力などを欠いてしまうでしょうし、そして苛つきもするだろうな、と思います。ズキズキした痛みを抱え、そして足を踏み出す毎にそれを感じていたならは、尚更、苛つきも感じてしまうものだろうなと思います。
理由その4:好意が中々通じない苛立ち
ある意味、これが最大の理由であるのかもしれません。梅澤真輝奈は渡直人に好意を抱いていますが、「失敗したくない」などの理由から、その気持ちを表すことが出来ずにいます。それ故、何かと理由を付けて渡直人にアプローチをし、渡直人の側から彼女の気持ちを察してもらおうとしていますが、渡直人は一向にそんな彼女の意を解しません。
(遠回しなアプローチ(7巻第2話))
それ故、渡直人に対しては好意を抱く反面、彼の鈍感さに対して苛立ちに近い気持ちも潜在的に抱き続けて
もいるのでしょう。そして、何かの契機でその気持ちが顕在化するという状態であるとも考えられます。
そして、渡直人の態度は溌剌としており、店長や女性店員からの呼びかけに愛想よく返事をしています。しかしながら、目に光がない表情からは内心の虚さが伺えますし、また、女性店員から取り皿の補充を催促されたり、ビールケースを運んでいなかったりする様からは、集中力を欠きつつある様子もまた伺えます。
2 梅澤真輝奈がビールケースを運ぶシーン(7巻第2話)
梅澤真輝奈は積まれたビールケースを指差し、渡直人に対して大声で「先輩!また瓶置きっぱ」と告げる。謝る渡直人に対し、梅澤真輝奈は「いいです!先輩いろいろ頼まれてるんだから」と言いながらビールケースを運び始める。
(手伝い(7巻第2話))
[考察]
梅澤真輝奈は足首を痛めているにも関わらず、ビールケース運びを始めてしまいます。理由としては、主に以下の3つがあるものと思われます。
理由その1:渡直人に対する同情と心配
悪態を付きつつも、梅澤真輝奈は渡直人に対し同情を寄せ、そして普段とは異なる彼の様子について心配もしているものと思われます。
ビールケースを運びながら「いいです、です!先輩いろいろ頼まれてるんだから」と梅澤真輝奈は渡直人に述べていますが、この時、頰は微妙な赤みを帯びています。これは恐らく梅澤真輝奈の「照れ」なのでしょうし、この時の言葉は本音でもあることの現れなのでしょう。また、普段からとは異なる渡直人の態度に心配も抱き続けているのでしょう。
同情し、そして心配しているが故に悪態を付きつつも、その一方で手伝ってあげなければ、と梅澤真輝奈は思ってしまったのでしょう。
理由その2:渡直人への優越感の維持
当初より鳴りを潜めたとは言え、梅澤真輝奈は渡直人を見下している態度を未だに示しがちです。渡直人への好意を明確に自覚している6巻以降においても、渡直人に対する、言わば「上から目線」な発言は散見されます。
(照れてるのに上から目線(6巻第3話))
梅澤真輝奈は、渡直人に惹かれつつも、その一方でまた彼を「冴えない」と思い、見下したい、力関係的に優位に立ちたいという気持ちを払拭し切れていないのでしょう。そんな梅澤真輝奈にとって、前日の爽やかな態度は見下されているようにも感じられ、腹立たしいものでもあったのでしょう。
(渡直人には不釣り合いな爽やか態度(7巻第2話))
それ故に、渡直人を手伝ってあげるという形で彼に対する心理的な優位性を保ちたい、とのモチベーションも働いてしまったのかなと思われます。
理由その3:不機嫌による判断力の低下
ビールケースは女性が運ぶにしては重量があるのでしょう。そもそも梅澤真輝奈は左足首を痛めている状況です。にも関わらず、ビールケースを運ぶという行為に手を染めてしまった理由には不機嫌によって判断力が低下してしまっていたこともあるのでしょう。
今回は以上で終わらさせて頂きます。
短くて済みません。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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