「渡くんの××が崩壊寸前」7巻はある意味、「渡直人の巻」とも言えるのでしょう。

(今はまだ様子見)


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6巻第6話において、館花紗月に甘えてしまう自分を認識し、そして、石原紫の母親である石原美桜の問いかけを思い出し、自分が「子供」であることを自覚した渡直人は、自立した「大人」を模索し始めたのでしょう。渡直人が抱く「焦り」は、そんな彼の成長の痛みでもあるのでしょう。そして、その果てに渡直人はようやく彼が「一番大切とするもの」を再認識します。


「渡直人の心境の推移について」においては、6巻第6話に端を発する渡直人の「大人」への模索の過程について考察するものとします。

今回は7巻第2話の中盤部分について考察します。

以降において、作中の記載は青字で、個別的な考察は赤字で記載させて頂きます。


徳井と石原美桜が会話するシーン(その2)(7巻第2話)

徳井の働いている花屋を訪れた石原美桜。徳井と彼の家庭に関して話を振るも彼は話題を逸らし、薔薇の鉢植えに関する要望を尋ねる。石原美桜はピンク色を要望する。

要望(7巻第2話))

[考察]

前回の考察(その10リンク先でも少し触れましたが、石原美桜がこの時、徳井の家庭の話題に触れたのは、「美桜さん」という呼び名に拘泥わり、そして如才無い会話をする徳井に程度はともかく敵意を抱き、そして牽制しようと考えたためだと思われます。この前のシーンで石原美桜が浮かべた満面の笑みは、彼女の抱いていた徳井に対するネガティブな気持ちを覆い隠さんとする意図もあってのものだったのでしょう。

満面の笑み(7巻第2話))

徳井も彼の家庭の話に触れられたくないのでしょう。石原美桜に背を背け、そして話題を薔薇の鉢植えのことに逸らしています。


徳井と石原美桜が会話するシーン(その3)(7巻第2話)

徳井は石原美桜に尋ねる。「この間の電話、直人に何を話に行ったんですか?」

石原美桜は複雑な笑みを浮かべながら答える。「だいたい想像ついているでしょう?」

見え透いた質問(7巻第2話))

沈黙の後、徳井は再び石原美桜に尋ねる。「美桜さんが2人が今付き合うのに反対なのって、オレのせいだったりします?」

石原美桜は怪訝そうな表情を浮かべたのち、どこか困ったような微笑みを浮かべながら答える。「まったく関係ない、とは言えないかな?」

徳井は嘆息し、そして「直人はいいヤツですよ。オレが言っても説得力ないかもだけど。」

石原美桜は答える。「知ってる。これでも私、渡くんのこと気に入ってるのよ」

[考察]

徳井の抱く複雑な心境、そしてある意味、徳井と美桜の気の合った様子が伺えるシーンです。

この一連の会話の意図するところですが、徳井としては石原美桜に対し、渡直人と石原紫との交際を認めて欲しい、と述べているのでしょうし、石原美桜としては、二人の交際を全く認めていない訳ではない、と徳井に答えている、といったことろなのだと思われます。

石原美桜に対する徳井の最初の質問は、彼女の意図への探り入れといったものだったのでしょう。そして、それに対する石原美桜の答えの「だいたい想像ついているでしょう?」といった台詞は、徳井の意図を理解した上で、ヒントや言質を彼に与えることを躱したものなのだと思われます。

それに次ぐ徳井の沈黙は婉曲的に質問しても埒が開かぬため、直接的な質問をすることへの決意を固めるためのものなのでしょう。

徳井にとって、「美桜さんが2人が今付き合うのに反対なのって、オレのせいだったりします?」という質問を口にすることは、ある種の苦痛を伴うものなのでしょう。「オレのせいだったりします?」という台詞の文字は強調されています。また、このコマ全体が影がかかったような描写となっています。

にしたくない質問(7巻第2話))

徳井の決して明るいとは言えない気持ち、そしてある種の決意の表れなのかなと考えます。何があったのかは未だ不明ですが、石原家と徳井との過去のトラブルを思い出すことは決して心地いいことではないでしょうし、それを質問といった形で口にすることにより、石原美桜から徳井に対する拒否的な意見を聞いてしまうことも苦痛でしかないのでしょう。しかしながら、婉曲的に聞いても石原美桜は躱してしまうため、徳井としては苦痛を伴いつつも直接的に聞かざるを得なかったのでしょう。また、その聞き方としては、渡直人は徳井とは違う、だから交際を認めて欲しいといった後の発言に繋げるためのものなのではないでしょうか。

石原美桜としては、徳井の直接的な質問にやや意表を突かれもしたのでしょう。この時の石原美桜の表情には、普段のような「繕った感」はあまり感じられません。

そして、「まったく関係ない、とは言えないかな?」という石原美桜の台詞は、過去の徳井の行為が、石原美桜をして石原紫と渡直人の交際に拒否的な態度を取っている一因であるとは認めつつも、その質問を発した彼の葛藤を察し、極力傷付けないようにと慮っての表現なのでしょう。苦笑とも受け取れる石原美桜の表情からは、そんな彼女の複雑な心の動きが伺えます。

徳井の嘆息は、想像通りとは言え、彼が聞きたくはない回答が石原美桜の口から発せられた事への失望含みのものなのかと思われます。また、石原美桜の頑ななスタンスが変わらぬことへのある種の失望といった気持ちもまたあるのかなと思います。

そして、「直人はいいヤツですよ。オレが言っても説得力ないかもだけど。」の徳井の台詞は、先の質問を発する時点で口にしようと思っていたものだったのでしょう。過去の徳井の行為が石原美桜の頑なな態度の原因となっていることを十分に分かっていた上での。

(弁明と独白(7巻第2話))

石原美桜の「知ってる」から始まる一連の台詞はようやく現れた彼女の本音なのでしょう。ただ、「気に入っている」とは、あくまで「子供」として、ということになのでしょう。渡直人との初対面時、石原美桜は極めて融和的な態度を示していますが、この時の台詞では渡直人のことを「良いコ」と表現しており、「大人」として、交際相手としては認めていません。

(「良いコ」(6巻第4話))


徳井と石原美桜が会話するシーン(その4)(7巻第2話)

微笑みを浮かべながら石原美桜は話を続ける。「ただ親として言いたいことは言っときたかっただけ。」「嫌悪されようと、畏怖されようとね。」

(嫌悪と畏怖(7巻第2話))

石原美桜は徳井に背を向け、どこか冷たさを感じさせる表現を浮かべながら、「 ー それに」、「どう出るかは、最終的にあの二人次第でいいのよ」と語る。

その言葉を聞き、徳井は驚いたような表情となる。

[考察]

石原美桜の、渡直人と石原紫との交際に対するスタンスですが、不快感は抱きつつも、謂わば「泳がせている」あるいは「様子見」といったものなのでしょう。後のシーンにおいても、そのスタンスが伺えます。

「様子見」(7巻第3話))

しかしながら、決して交際は認めている訳ではないのでしょう。「大人」になるまで交際は認めない、というのが石原美桜の基本的なスタンスであり、また、彼女が危惧する「何かあったら」という状況を起こしかけた渡直人に対しては、恰も真綿で首を絞めるかの如き恫喝的な態度も示します。

(笑顔での恫喝(7巻第1話))

そして、渡直人に対する一連の振る舞いは、彼に「畏怖」されることを計算してのものでもあったのでしょう。

「どう出るかは、最終的にあの二人次第でいいのよ」と石原美桜は話します。そして、その時の表情にはどこか冷たさも感じられます。渡直人と石原紫の振る舞い如何によっては、二人の交際を明確に中断させることも考えているのでしょう。

(あくまで態度は保留中(7巻第2話))

石原美桜はこのシーンにおいて、徳井に背を向けています。それはおそらくこの時の石原美桜の感情が露出した、冷たさを含んだ表情を徳井に見せたくなかったが故なのだと考えます。

徳井の表情、それは石原美桜が渡直人と石原紫の交際を完全に否定している訳ではないこと、石原美桜なりに態度を軟化させていることへの驚きの表れなのでしょう。その一方で、場合によっては二人の交際をやめさせるといった石原美桜の冷然とした意図もまた察しているのでしょう。


徳井と石原美桜が会話するシーン(その5)(7巻第2話)

徳井は薔薇の鉢植えを夕方に石原家に届けると述べ、そして「前向けの頑張り屋さん」だから渡直人と石原紫は別れないと思う、と述べる。

石原美桜は「ほほほ」と笑い声をあげ、そして「そうみたいねえ、だからこそ進む道を間違えないか不安なのよ」と微笑みを浮かべながら述べる。

(だからこその心配(7巻第2話))

[考察]

徳井は渡直人と石原紫は別れないだろう、と石原美桜に述べますが、これは石原美桜の「どう出るかは、最終的にあの二人次第でいいのよ」という言葉から、場合によっては二人を別れさせるとの彼女の意図を感じ取り、そんな彼女に釘を刺そうと考えたためだと思われます。

石原美桜も「前向けの頑張り屋さん」という、渡直人と石原紫に対する徳井の見解には同意しているのでしょう。ともすれば視野狭窄に陥り、そして暴走しがちな性格は、渡直人と石原紫の共通点とも言えるのでしょう。

(視野狭窄からの暴走・渡直人編(5巻第3話))

石原美桜の「だからこそ進む道を間違えないか不安なのよ」という台詞、そしてその時の微笑みは、謂わば「母」として娘の成長を見守りたいという気持ちの表れでもあるのでしょう。


今回は以上で終わらさせて頂きます。

最後まで読んで頂きありがとうございました。