館花紗月の渡直人への態度は、基本的に好意に基づくものが主体ですが、それだけではありません。石原紫の存在を意識する状況では嫉妬を態度として示しますし、畑荒しの話の際は、怒りや失望など、非常に複雑な態度を示します。また、大きな流れとして、渡直人と石原紫との交際の開始を契機とし、その前後で渡直人への態度も変わります。

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「渡くんの××が崩壊寸前」作品紹介及び考察計画


今回は館花紗月の渡直人への態度について整理し、考察してみます。


直人への態度について

基本、今までの投稿(館花紗月の言動の謎など)において述べたものがメインではありますが、館花紗月の渡直人への主な態度について、以下に列挙します。

好意に基づく態度

①明るく軽いアプローチの態度

②真剣なアプローチの態度

③役立ちたい態度

④「ただの幼なじみ」の態度

ネガティブな感情に基づく態度

①嫉妬を感じた時の態度

②畑荒しに関する話の時の態度

③構ってくれない時の態度

④他人扱いする時の態度

⑤側に居られなくなるかもの時の態度

⑥関わりを断ちます態度

儚さを感じさせる態度


以下、それぞれの態度について考察します。


それぞれの態度個別の考察

好意に基づいた態度

明るく軽いアプローチの態度

1巻及び2巻、3巻から渡直人と石原紫との交際が始まるまでの間においてよく見られる態度です(詳細の説明についてはこちら)。6年ぶりに再開した喜びの表現であったり、嫌われつつも側にいるための方策であったり、渡直人に選択肢を提示する目的もあったり、そして親近感を向上させるものであると思われます。

ただ、4巻以降は鳴りを潜めています。理由としては、渡直人が石原紫と交際を始めたため、あまり変なことはできなくなったこと、そして、おそらく渡直人の館花紗月に対する好意(彼自身はまだはっきりとは自覚してないと思われます)を認識したため、あんまり無茶する必要もなくなったのかな?と思われます。

②真剣なアプローチの態度

2回のキスや5巻第4話(境界線)の時のような態度です。明るく軽いアプローチが親近感の向上などを企図していることに対し、これらはいわば勝負を仕掛けてきている態度です(詳細の説明についてはこちら)。

③役立ちたい態度

作中、一貫して館花紗月が取っている態度です(詳細の説明についてはこちら)。館花紗月の行動において最優先されるものであり、渡直人が望むのならば、石原紫との関係を深めることに対しても貢献するなど徹底されています。理由としては、館花紗月が彼女自身の欲望がどうでも良くなってしまうほど圧倒的な好意を渡直人に抱いていること、そして彼女が側にいることが出来る間の献身を望んでいることではなかろうかと思われます。

④「ただの幼なじみ」の態度

4巻第4話以降に見られる態度です。これ以降、渡直人と石原紫との交際が始まりましたが、館花紗月には幾分かの余裕も感じられます。理由としては、4巻第4話において、「ただの幼なじみ」として渡直人の側に留まることについて彼の了解が得られたこと、彼が彼女を必要としていることを真剣かつ切実な態度で明言したこと、そして言外に彼の好意を確信したためだと思われます。5巻第2話の渡家で野菜を食べている時のやり取りのように、「ただの幼なじみ」とは言いつつも、お互いが渡直人が好意を抱いていることを認識しているであろうという、何とも微妙な距離感です。

(「幼なじみ」の用法)

ネガティブな感情に基づく態度

①嫉妬を感じた時の態度

主に渡直人が館花紗月そっちのけで石原紫に興味や関心を示している時に示す態度です。3巻までによく見られます。「ぷくぅ」といった擬音語とともに怒りを表したりします。ただ、渡直人と石原紫との交際が始まってからは影を潜めています。

②畑荒しに関する話の時の態度

館花紗月が最も過敏に反応するのが畑荒しの話題になる時です。渡直人に反感を示す場合もあります(詳細の説明についてはこちらこっちにもあります一方的に裏切り者扱いされることへの反感や、おそらくその前日の逃避行で期待を裏切ったことへの失望など、畑荒しの件に関しては極めて複雑な感情を抱いていると思われます。また、事実関係が露呈することを極度に警戒しています。そのため、この話題が出ると、手練手管を弄してはぐらかそうとしたりします。

(とぼけたりはぐらかしたり…)

なお、4巻第2話において、渡直人が畑荒し自体には怒っておらず、その後に館花紗月と会えなくなってしまったことが嫌だったと、6年前に好意を抱いていたことの事実上の告白をしたことから、畑荒しに関する館花紗月の感情は大きく変わったと想像されます(これ以降、2人の間で畑荒しの話は出ていないため、今のところ、館花紗月がどう考えているかは不明です)。

③構ってくれない時の態度

館花紗月が構って欲しい時に、これを袖にすると怒ったり不満を露わにしたりします。館花紗月としては、渡直人との関係を親密にしたいと願っており、また、より多くの興味を示して欲しいと思っているのでそうなってしまうものと思われます(詳細の説明についてはこちら)。

④他人扱いする時の態度

館花紗月は常々渡直人の為になることをしたいと願っています。また、渡直人に近しい存在でありたいと願ってもいます。そのため、渡直人が悩みを抱えているのに、館花紗月を他人扱いするなどして教えなかったり相談しなかったりしたら怒ったり落胆した態度を示します(詳細の説明についてはこちら)。

⑤側に居られなくなるかもの時の態度

館花紗月として最も恐れているのが、渡直人の側に居られなくなることだと思われます。3巻ラストから4巻第4話までの怒りの主因は、渡直人と石原紫の交際が始まることにより、館花紗月が渡直人の側に居られなくなってしまうと考えたことだと思われます。側に居られなくなってしまったら、渡直人の役に立つことも出来ないし、彼から優しさを受け取ることもできません。関係を深めることも叶いません。館花紗月にとってはまさに死活的な問題なので、絶望的な気持ちになり、そして彼女の切実な願いを理解してくれない渡直人に怒りを向けてしまうのも当然かと思います。

⑥関わりを断ちます態度

4巻第2話において示した態度です。2回目のキスでも渡直人に好意が通じず、最早渡直人の側に居られないと絶望したため、館花紗月はこの態度を取ったものと思われます。

(絶縁宣言)

儚さを感じさせる態度

好意でもなければネガティブな感情に基づく訳ではないけれども、ある意味非常に重要な態度です。これが何なのか分かりやすく言うと、渡直人の前からいつか居なくなる、消え去ってしまうような予感を抱かせる態度です。作中で時折仄めかされますが、2巻第6話での電車の中で示した態度に最も顕著に現れていると思われます。当該シーンは非常に意味深な場面です。館花紗月は、結局は渡直人・鈴白の傍らには行けないといったことを仄めかし、渡直人は相当に動揺して何かを聞きかけるものの中断し、そして館花紗月との関係の脆さを感じています。あれだけ積極的に関わりを持とうとし、そして毎朝畑の手伝いに来る館花紗月との関係を脆いものと感じるのには、渡直人は館花紗月がまたいつか目の前から居なくなってしまうとの予感を抱いているような気がします。

(何かに不安を感じる渡直人)

また、館花紗月が直接に示した態度ではありませんが、4巻第3話における、館花紗月の部屋の寂しい有り様も彼女の儚さを示しているものと思われます。部屋の有り様を目の当たりにした渡直人は寂しげに佇む館花紗月の幻を見、その直後に6年前の逃避行を終えて別れる時、すなわち最後に見た彼女の寂しそうな笑顔を思い出し、そのことが館花紗月が居なくなってしまうことへの危機感を募らせたものかと思います。

ある意味、渡直人に最も危機感を抱かせる態度なのでしょう。


考察

作中を通じて最も継続し、かつ一貫して示される館花紗月の渡直人への態度は、「役立ちたい態度」でしょう。畑の手伝いは1巻の頃から継続的かつ陰日向なく続けています。また、雨の日に傘を渡直人に貸し自分自身は濡れて帰ったり、大雨の夜、バイト帰りに渡家に寄って畑にシートを掛けたりするなど苦労を厭いません。石原紫との接近についてもサポートしています。海では藤岡先輩を実力行使して撃退し、石原紫と渡直人の接近を決定的なものにしました。極めてストイックな態度です。

(渡直人に傘を貸し、自分は濡れて帰る館花紗月)

次いで継続的に示されるものは、「 さを感じさせる態度」でしょう。表面化する頻度こそ、さほど多くはありませんが、振り払うことの出来ぬ影のように館花紗月の態度の裏に常にあり、渡直人も薄々感じ取っているものと思われます。

また、「畑荒しに関する時の態度」も潜在的なものではありますが、継続して示される部類のものでしょう。渡直人が畑荒しの後、館花紗月が姿を消してしまったことに拘り続けているように、館花紗月も畑荒しの前日の逃避行の一件を引きずっているものと思われますし、また、館花紗月は本件の事実関係を決して明かさないという頑なな態度も継続しており、渡直人との関係の好転を妨げる要因となっています。

以上の3つは、いわば基底的な態度と言えるでしょう。これらに対する、いわば表層的な態度として、最初に示されるのが、3巻ラスト前までは「明るく軽いアプローチの態度」であり、3巻ラストから4巻第4話までは「側にいられなくなるかもの態度」及び「関わりを断ちます態度」でした。そして4巻第4話以降は「『ただの幼なじみ』の態度」にシフトしています。

その他の態度については、イベント的に示される感じです。


基底的とか表層的とか言われても訳分からないんで、イメージ図載せます↓↓


図の下の方に位置してる態度が基底的な態度、上の方に位置してるのが表層的な態度だとお考え下さい。左から右が時系列です。役立ちたい態度が最もベースであり、そして作中において一貫して示されています。次いで儚さを感じさせる態度は、作中で示されたのは2回ですが、彼女が常に纏っているものでしょう。畑荒しの話の時の態度も継続的に示される部類になりますが、4巻第2話で変容していると思われます。
表層的な態度として、作中での初期において、館花紗月は明るく軽い態度を示しており、3巻ラストにおいてこれが変化、側にいられなくなるかも態度、そして関わりを断ちます態度になります。そして、4巻第4話において2人が仲直り、また渡直人と石原紫の交際が始まった後は、「ただの幼なじみ」態度になります。

その他の態度の例として真剣なアプローチの態度を図中に示してますが、1巻第1話、3巻ラスト及び5巻の境界線として、イベント的にその態度を示しています。嫉妬や構ってくれない時の態度の発生も同様とお考え下さい。


以上、渡直人に対する館花紗月の態度になります。

次回は今回の考察を踏まえ、渡直人に対する館花紗月の感情について考察予定です。


最後まで読んで頂きありがとうございました。