素早く動けるようになったな……
と自分より一回り歳上の巨人師匠からも本日お誉めの言葉を戴いたが、研修に入って一週間、新たに配属された職場での、少なくとも基本業務に関しては自分でも手応えを感じ始めている。初日は何の事やらさっぱりで、こんな複雑極まる業務が本当に自分に勤まるのだろうか?……と不安に押し潰されそうだったのだけれど、一日、また一日……と少しずつ、でも着実に分かって来て、今は大まかな流れはずいぶん理解できるようになった。
まぁ理解できるようになったといっても、頭よりも先に身体が反応するレベルには勿論まだ程遠い。こういうのは積極的に場数を踏んで慣れてゆくしかないのだ。まだ道のりは長く果てしないけれど、少しずつ、本当に少しずつ……
で、業務の引き継ぎ中の相手、いま現在の責任者の事を何ゆえ巨人師匠と呼ぶかと云うと、これがびっくりするほどオール阪神・巨人の巨人師匠クリソツなのだ。最初は、「この人って、誰かに似ているな……」と思いつつ、それが誰なのかに思いを馳せるだけの気持ちの余裕が持てなかったのだけれど、何の事はない、その風貌は勿論、淀みなく延々と続く流暢なお喋りも、風格のある世慣れた雰囲気も、巨人師匠そのものだ。そりゃ本部も一目も二目も置く訳だ……と素直に納得がゆく。
実際の巨人師匠もそうだけれど、この人も自信満々で、些か自慢話が多すぎるのが珠に傷のような気もしないではない。しかしこれに関しては、今後この人と何かと比較されて、周囲から蔑みの視線や悪意をぶつけられるのだろうな……という劣等感にまみれた鬱屈がそう思わせる面も大なのだと我ながら思う。ニュートラルな気持ちで現在の責任者に思いを馳せれば、もしも違う出会い方をしていたら、恐らくこの人の器の大きさに憧れ、心からの尊意と好意を寄せていたに違いない。今も交遊のある、前の前の職場で知り合ったi部長に対する気持ちのようにね。
要するに自信とは無縁の人生を送って来てしまった僕の心が、いつの間にか萎縮して、卑屈にいじけちまっているだけの話なのだよ、うん。
巨人師匠のようにお客さん達と世慣れた付き合い方が出来る責任者には到底なれない。硬軟使い分けて部下の信頼と人望を受ける存在にも決してなれないだろう。泥臭く、あくまでも僕は泥臭く、無様に、不器用に、恥にまみれて、しかし懸命に日々の業務をこなしてゆくしかないのだ。その姿が前任者と比べられて、「責任者として不適格」と見限られたらその時はその時。失敗したとて別に命まで奪われる訳でもない。
一日、また一日、兎に角やってゆくしかない。
だけど今の僕は、ある意味とても密度の濃い時間を過ごしていると思う、そう、久しぶりにね。
(付記)
今回のこの記事は、現在の職場に移ってから個人的な記録の意味合いで綴っている、些かリアルに肉薄し過ぎて下書きのまま放置せざるを得ない一連の記事の一つに組み込まれる予定だったけれど、書き上げた内容を読み返せば、意外にリアルがボカせている事に気づいて、思いきって公開する事にしました。
今の僕にはとても大切な存在であるネットに巣食う神様に、新たな職場での現状を報告させて貰う意味合いも含めてね。
誰か一人くらいには、必死に足掻く今の僕の呻きや吐息、そしてささやかな喜びなどの感情の、その幾ばくかが届いてくれたなら……と願いながら。