2016年の僕の初夢。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 夢を見た。
 とある女性が匿名で利用しているSNSアカウントを、いつものようにパソコンで覗いている。本来なら辿り着ける筈のないその匿名アカウントに偶然にも辿り着き、もう二年近くになるだろうか? 思いを寄せていた女性のアカウントなので、以来その匿名アカウントのチェックを毎日欠かさない。そこに更新される記事や写真を覗くのが、僕の日々のささやかな楽しみの一つだ。
 しかし今回はいつもとどうも調子が違う。いつもはその日に食べた物が写真でアップされる事が多いのだけれど、今日は、秒針が壊れて反対に回る時計とか、痩せ衰えて骨と皮の状態の猫とか、鹿の背中に乗った軍服姿の猿が刺繍されたセンス最悪の色褪せた黄色いセーターとか、何だかよくわからぬものが画面の中を次々流れてゆく。その都度、「この壊れた時計を利用して生活すれば、どんどん若返るかもしれない」とか、「この猫って空気入れたら膨らむのかな?」とか、「服屋の福袋買って、最高の一枚を手に入れた!」とか、女性の声でナレーションが入るのだけれど、その声が、もう久しく聞く機会のなかったあの人の声のような気がする。
 懐かしいなぁ……
 と甘酸っぱい気持ちを胸中に湧かせながら、そのナレーションの声に耳を傾けていたのだけれど、最初パソコンのスピーカーから聞こえていたその声が、次第に部屋の何処か他の場所から聞こえて来るような感覚に囚われ始めた。そして徐々に耳元へ声が近づいて来るのだ。
 やがてパソコン画面の中に、十字架に貼りつけられて項垂れる裸のキューピー人形の写真が現れたその時だった、
「これが、今年のあなたに待つ現実よ……」
 明らかに息づかいも感じられる程の間近で、背後から耳元にそう囁く声。肩に手も置かれたような気がして、ぞっとして振り返ると、そこには誰もいない。勿論あの人の姿もない。しかし背後に置かれた洋服ダンスの中に得体の知れぬ気配を感じる。その扉を開けると、あの人に似て、しかし既にあの人とは違う、悪意に満ちた怨霊が潜んでいるような気がして怖くなる。
 もしかして僕に覗かれている事に気づいたあの人が、僕を懲らしめる為に送って来た念が、いつの間にかあの人のコントロールを離れて、気づけば邪悪な怨霊に変貌を遂げてしまったのかも……
 と考えながら目が覚めた。
 それが2016年に見た僕の初夢。全体のトーンを不安と怯えに彩られた、ずいぶん混沌とした内容の夢だったけれど、思いを寄せていた女性が久しぶりに現れたのだから、まぁ良い夢だったのだと無理矢理そう解釈する事にしよう。
 夢が不安と怯えに彩られているのは、今は仕方ない事なのかもしれない。