人の世に溜め息ひとつ、又ひとつ。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 人の世に溜め息ひとつ
 そっと吐き、
 適応能力が著しく欠けた身には
 あまりにも悪意に満ちた辛く切ない世と思う。
 夜ふけの帰路の折れた心に
 思い出ぽろぽろ蘇れども、
 それが、
 鈍臭く不器用ゆえの哀しみと恥辱が満ちる思い出ばかりならば
 立ち止まり、
 見上げた夜空に見つけた月も
 そ知らぬふりしてそっぽ向く。

 あぁ吹き抜ける風も心地よく
 この世は美しく魅惑に満ちているのに、
 僕の人生は失意の吐息にまみれっぱなしで、
 鳥に憧れながら
 地べた這う道程だった。
 花に見惚れながら
 その美しさに傷つけられる日々だった。

 だけど人の世に居場所が見いだせないならば
 せめて思い出を花鳥風月に塗り替えて
 人間の息吹から遠く離れた場所に
 夢見る心それだけでも逃したい。
 心地よく美しい憧憬と戯れながら
 微笑む月の幻想に惑溺していたい。
 そう、人の世に溜め息ひとつ
 惨めな溜め息また繰り返せども
 僕はもう一つの世を育み広げてゆくだろう。

(二十代後半に使用していた大学ノートより抜粋、改稿)。