歌.375 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 自宅のベランダから見る空が好きだ。空は誰のものでもないのだけれど、この瞬間、この場所から見る空だけは僕のものだ……と、よく思う事がある。この空は、いま僕が見ているこの空だけは、ビル・ゲイツも孫正義も手に入れる事は出来ないのだ……と。馬鹿げた負け惜しみに聞こえるかもしれないし、事実そうなのだけれど、しかし、この思いの中には確かに真実も含まれていると思う。……
 と秋晴れの空の下に洗濯物を干し終えた直後に一首。

この空は僕だけの空ベランダに洗濯物を干し終えて今。

 空を見る度よく思う。いま見るこの空は一回性のもので、もう二度と同じ空として姿を現す事はないのだな……と。翌日、同じ時間帯に同じ場所から仰いだとて、その空は昨日見た空とは模様を異にしている。そういう一回性の空が最近とてもいとおしい。一回性の空が、そんな風に姿を変え色を変えて永遠に続いてゆく事を思うと、なぜだか少し気が楽になる。
 そう、僕も又ずっとこの空の下で同じように姿を変え色を変えて生きて来たのだ。僕の存在は、それだけの現象に過ぎないのだ……と。