お、格好いい!
……玩具屋のショーウインドウに飾られていたゾロノア・ゾロのフィギィア人形が本格的な凄みを漂わせていてムチャクチャ格好よかったので、思わず立ち止まり、しばらく見惚れてしまった。
という次第で、刀を正面に構えて睨みを効かせるゾロ人形にインスピレーションを受けて一首。
猛りたつ凄腕剣士が腰に差す刀のごとく我がいま危うし。
いや、職場でね、本当に糞生意気な悪ガキどもとのバトルが相変わらず続いているのだよ。僕も最近は腹を括って、とことん乱暴な言動でやり返す事にしている。これだけ本部に繰り返し報告を上げているのに、連中が一向に対策を考えようとしないのなら、もう個人の裁量で勝手に対峙するしかないだろう。それなら僕が取るべき裁量は、世間を舐め腐っているガキどもに対して、僕も徹底的に暴力的な大人として対応させて貰う事だ。僕が怒りの感情を全面露にして、今にも殴りかからんばかりの勢いでリーダー格の少年を罵った時、普段は他人を蔑み笑う表情ばかり浮かべている少年の顔に束の間怯えに硬張る表情が見て取れた。目線が助けを求めるように気弱に揺れた。所詮まだ中学生なのである。どっちの心が先に潰れるか、殺るか殺られるか、とことん勝負してやろうじゃねーか。そもそも考えてみれば、ここで問題を起こして追放されたとて、大して惜しい職場でもなく、寧ろそれがきっかけで、もっと残業が発生して仕事内容の条件も良い勤務地に異動できればラッキー位の、まぁ、ぶっちゃけその程度の職場なのだここは。もう開き直って、この職場のトラブルメーカー的な存在になってやろうじゃねーか。怒りと憎しみの情しか湧かぬ糞ガキどもに対しては、今後もどんどん悪し様に罵って、とことん険悪になってゆけばいい。
そもそも、こうゆう状況下で我慢強く大人の対応が出来るような器の持ち主なら、もっとひとかどの人間になれていたよ。なれねーから、こうゆう場所で、程度の低い連中との軋轢の日々しか生きられないんじゃねーか。要するにここは、大人になるべき処でなれなかった成れの果てが、必然的に辿り着いた自業自得の場所なのだ。だったら今更うじうじ悩んでいないで、駄目な大人なら駄目な大人としての筋を通して、とことん感情ぶっ飛ばしちまえよ……と。
まぁ、だけどそれはそれとして、一線だけは越えないようにしなければ……という思いもある。どれだけ感情的に殺りあっても一線を越えぬ事、それだけは常に心がけていたい。感情の刀を抜き身にして実際の暴力にまで至らせてしまったら、それこそもう、今の段階で既にあって無きに過ぎない、その、かそけき明日さえ無くなっちまう。感情を外に吐き出しているように装いつつ、絶えず頭の片隅に冷静なもう一人の自分をスタンバイしておかなければ……刀の鞘に手を掛けても、決してそれを抜いてはならないのだ。
現在の僕の状況下は、その事を絶えず意識していないと、本当に取り返しの付かぬ事態を招きかねない、そんな危うい状況下なのだと思う。~そりゃ血に飢えた剣士に振られる刀の如くなりたい気持ちは山々なのだけれどね。