歌.342 | 春田蘭丸のブログ

春田蘭丸のブログ

願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 自転車での通勤の行き帰りに教会の前を通る事はここでも何度も書いた。通る度に教会の屋根の上に立つ十字架を見上げて、内心で話しかける習慣も既に馴染んで久しい。その十字架の横木の上に、よくカラスが止まっている姿を見かける。毎度同じカラスなのか、或いは色々なカラスが入れ代わり立ち代わりそこに休むのか、その辺は窺い知れぬが、神の使者を思い浮かべて見上げると、これも又、なかなか風情のある奴である。
 職場で嫌な事が積み重なり、身も心も疲れ果てたかのように重たいペダルを踏み締める夕暮れ時の帰路、すがるような気持ちで見上げたそこにもやはり奴はいて、僕が見上げたそのタイミングを見計らうかのように、「あー」と一声鳴いた。その時に頭にふと浮かんだ一首。

十字架に休むカラスは「あー」と鳴き逢魔が時の誰になに告げらむ。

 僕の心さみしさに共鳴してくれたのだと思う事にするよ、神の使者のカラス君。……誰にも見せられない涙を、きみにだけ、ほんの少し託して慰めて貰ったような気がした。ありがとう。