爆裂都市 BURST CITY | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 YouTubeに全編がアップされてるのを見つけたので当然の如く観た。
 いや、1982年に発表されたこの映画、若い頃に凄く観たくて仕方なかったんだよな。
 なんと言っても出演者の顔触れが凄い。
 大江慎也、
 町田町蔵、
 遠藤ミチロウ、
 更に泉谷しげる。
 当時の日本のロックシーン及びパンクに少しでも関心があった少年少女にはこの面子、実際よだれが出そうな堪らない面子だったりするんだよな。
 そして監督が、当時カルト的な評価のピークに達していた石井監督(『そうご』という名前が漢字で上手く変換できなかった)。
 という次第で、この映画も死ぬまでに一度くらいは観ておきたい映画の中の一本だったのだけれど、30年以上の歳月を経て、ようやく観ることが出来たその感想は……
 いや、YouTubeで拾った画像の悪い映像をパソコンで観るという最悪の条件で観ておいて、あれこれクサすのはフェアではないだろう。
 だから、「この映画、もしも多感な十代の頃に、ちゃんとした映画館で観ていたら、あるいは生涯忘れられない映画になっていた可能性もあるよね……」とだけ言っておく。
 なんと言っても、あの浅野忠信が、「この映画を観て役者を志した……」と語っていたほど、当時のサブカル少年少女たちに影響を与えたカルト映画だったのだから。
 但し、この映画が発表された直後、この映画の出演者でもあった泉谷しげると遠藤ミチロウが対談で、「あの映画、タイトルは爆裂都市だったけれど、全く爆裂していなかったよね」「そもそも陣内孝則なんか主演にしている時点で、お里が知れてるんだよ」といった具合に冷ややかに貶していたことも覚えている。
 そして僕が今回観た感想もどちらかと言うと泉谷やミチロウと……いや、やっぱりフェアではないから止めておこう。
 印象に一番残ったのはキチガイ弟役を演じた町田町蔵。目をひんむいて、「あー、うー、あー、うー!」と唸っているだけなのに、その尋常ではない存在感は、やっぱ凄い。間違いなく、この人は選ばれし本物のパフォーマーだと思う。
 それに引き替え遠藤ミチロウは……ここでも江頭2:50にしか見えなかったぞ。その存在感が町蔵の足元にも及ばないぞ。
 だけどパンクの基本って、そもそもそういうものだよね。決して本物にはなれないガラス球が、自分の事を色褪せぬダイヤモンドに見せようとあれこれ身体を張って工夫して、悪戦苦闘も虚しく結局最期は砕け散ってしまう、その悲壮感が漂う過程の中にパンクの物語や美学は生み出されるのだ。
 表現者としてのスケール、その存在感、どちらも町田町蔵に比べると見劣りしてしまう遠藤ミチロウだけれど、ある意味スターリン時代に砕け散って、その後、騙しだましの活動を今日まで地道に続けて来たミチロウの泥臭い執念の方にパンクの精神と切なさを感じてしまう。