東京宝塚劇場 新人公演『グレート・ギャツビー』を動画配信で鑑賞しました。
9月22日(木)18:30開演。
本公演の場面を若干カットして1幕仕立てにしたこともあり20:15に終演。
本公演(月組公演『グレート・ギャツビー』3回は泣ける文句なしの名作! 〜「グレート Great」の意味〜)とは違う魅力のある「新人公演」。
まして今回は名作「グレート・ギャツビー」。
フィッツジェラルドによる、20世紀アメリカ文学を代表する長編小説を、世界で初めてミュージカル化した作品です。
(月組公演『グレート・ギャツビー』初日舞台映像(ロング)より)
新人公演の感想は下の通り。
●ジェイ・ギャツビー役の主演、彩海せらさん(本役:月城かなとさん)
まっすぐなジェイ・ギャツビーは、ストレートばかり投げてくる投手のような凄みがあって、新鮮でした。
その一方、何気ない所作に、本役の月城かなとさん(上級生)への憧れも随所に感じました。
本役とは別の角度から、ジェイ・ギャツビーという男の本質、「根っこ」を見せてくれたように思います。
後半(禁酒法下のもぐり酒場「アイス・キャッスル」)から本領=独自色を発揮されている印象を受けました。
●デイジー・ブキャナン役のヒロイン、きよら羽龍さん(本役:海乃美月さん)
成長ぶりーーなかんずく大きな包容力に驚かされました。
豊かな才能もさることながら、場数を踏むことの大切さを見た思いでした。
もはや貫禄さえ漂う抜群の安定感。
そして、毎度ながら歌がうまい!
●トム・ブキャナン役の七城雅さん(本役:鳳月杏さん)
前半と後半で、高慢な人間を二色に分けて演じているところが面白かったです。
味変というのでも、別の側面を付け足していくというのでもない。
ーー普通の顕微鏡でサンプルを見た後、偏光顕微鏡で同じサンプルを見るような。
設計図の正面図と側面図のような。
人間性を立体的に表現するのに、こういう構築的なアプローチもありだなと思いました。
●ニック・キャラウェイ役の瑠皇りあさん(本役:風間柚乃さん)
この役はすごく難しいーー重要人物なのに物語(周りで起こること)に終始翻弄される、チベット仏教のマニ車みたいな役。
おまけに本役が、芝居巧者の風間柚乃さん。
難しい上にやりづらかったと思います。
次々と起こるのみ込めない状況を必死で受け容れようとする、アメリカ中西部出身の青年の純朴な感じがよく出ていたように思います。
マニ車はよく回った。
その他、今回、特筆しておきたいことを。
■マートル・ウィルソン役の白河りりさん(本役:天紫珠李さん) ※トム・ブキャナンの愛人。ジョージ・ウィルソンの妻。事故死。
■ジョージ・ウィルソン役の真弘蓮さん(本役:光月るうさん) ※マートルの主人。ジェイ・ギャツビーを射殺した後に自殺。
■スレイグル役の槙照斗さん(本役:蓮つかささん) ※「泥沼時代」のジェイ・ギャツビーを知っている暗黒街のワル。
この3人、
本役の代わりが務まります。
そのまま本役でいける高い完成度。
(本役の皆さま、ごめんなさい)
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終演後の舞台あいさつで、主役の彩海せらさんが涙ぐみながら公演開催の感謝の言葉を述べられていました。
関係者の新型コロナ感染で宝塚での新人公演が取りやめになり、東京でも取りやめになれば新人公演自体が流れてしまう。
稽古の時間も限られていたと思います。
厳しい状況、重圧を乗り越え、宝塚歌劇団のみならず日本の演劇史上に残る名作『グレート・ギャツビー』を演じきった月組新人の皆さまに、こちらこそ心からお礼を申し上げたい。
特別な舞台を見せていただき、本当にありがとうございました。
★カフェブレイクでMCの中井美穂さんが「(ジェンヌさんを見るための)目が足りない」と言っている意味がだんだん分かってきました。