宝塚大劇場へ
を観に行きました。
(1)
第1部
ミュージカル・キネマ
『今夜、ロマンス劇場で』
原作/映画「今夜、ロマンス劇場で」(c)2018 フジテレビジョン ホリプロ 電通 KDDI
脚本・演出/小柳 奈穂子
映画が原作で、あらすじを言ってもネタバレにはならないかと思いますが、
ここでは原作との違いなどには言及せず、スターや組全体の印象を中心に書きます。
例によって、もう原作のトレースやスピンオフなどではない、
「オリジナルの舞台作品」と言っていい素晴らしい仕上がりでした。
●全体的に、「一枚岩」というのか「月組全体で作品を作り上げる」という一体感を非常に強く感じました。
トップスターがメンバーを牽引しているとか、
主要メンバー/非主要メンバーー露骨に言えば「主要キャスト」に名前が載るかどうかーーの壁の存在を感じるとか、
そういう感じはなかった。
月城かなとさん、海乃美月さんにカリスマやリーダーシップがないと言うのではなくて、
「『俺についてこい』みたいな親分的なカリスマやリーダーシップを発揮させない形」で組を牽引しているように感じます。
個人的には新鮮でした。今後も楽しみです。
●主人公とヒロインの、分かりやすさと深さの両立した感情表現に感心しました。
月城かなとさんは「男の、異性に対するコンプレックス、自分の可能性に対するコンプレックス」を非常によく研究されていました。
近づきたいけれど、近くのは怖い。成功したいけれど、自分の無能を思い知るかもしれない。
月城かなとさん、本当は男なんじゃないかと思ったほどです。「タダ者ではない」と前から思っていましたが、感心しました。
一方の海乃美月さんも、愛したいのに愛せないーーそれにはある「事情」がありましたーー状況にどうすることもできない無力感や憂いを、おてんばな行動の中にも忍ばせていたように思います。
普通でない境遇ゆえに「愛している」と表出できないもどかしさがよく出ていて、だからこそ、最後のシーンが感動的で(泣きました)、いい意味で、近松の心中物(文楽/人形浄瑠璃)のような凄みがありました。
「死とは、愛を完成させ、愛に生きた人生を永遠のものにすることだ」という凄みです。
●主役を食う脇役のディープな個性
「芝居の月組」は脇役もーー端役にいたるまで要注目ですが、個人的には俊藤龍之介役の鳳月 杏さんと大蛇(おろち)丸役の暁 千星さんが出色でした。
鳳月 杏さんは「料理の鉄人」の司会役をしていたときの鹿賀 丈史さんを、
(100人中95人に「何、あれ(あの役作り)」と言われたという・・・)
暁 千星さんは「『金八先生』でないときの」武田 鉄矢さんを彷彿させます。
(「オレだって頼まれてやってんだ! 金八を」みたいな吹っ切れ方が爽やか)
「ここ、笑うところですよ、お客さん!」と煽る「決め!」なポーズやしぐさも、
レビュー仕込みだからこれがまた決まってしまって、観客も笑ってしまうしかない。
「煽りに乗りたくないのに乗ってしまった」という敗北感さえ心地よく感じられる明るさがありました。
●舞台演出(美術)の巧みさ
詳しく書くとネタバレになってしまいますが、
モノクロとカラー、虚構と現実、過去と未来の、
「2つの領域の境界線の溶かし方・作り方」が巧みな舞台美術、演出に感心しました。
いい意味で「今、自分はどこにいるんだっけ」と撹乱させてくれる舞台です。
主人公の牧野健司(月城かなとさん)の頭の中の世界に迷い込んだ気分になります。
ラストで、鈴木清順ばりの見事な演出があります。
劇場に見に行かれる方はお楽しみに!
(ネタバレになるのでここでは詳細は書きません)
宝塚歌劇はどうしてもスターに目が行きがちですが、
(レストランに行くのは美味しい料理を楽しみたいからで、ワイングラスや椅子を鑑賞したいからではない)
彼らを支える裏方も、夢のような「タカラヅカ」の舞台づくりに貢献していることは力説しておきたいです。
それはパンフレットにも表れていて、 キャスト(スター)の前に制作スタッフが紹介されています。
モノクロからカラーへ、過去から未来へ、不安からそれを乗りこえた愛ーー期せずして、のところもあるでしょうが、今の時期にぴったりの舞台です。
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(2)
第2部
ジャズ・オマージュ
『FULL SWING!』
作・演出/三木 章雄
こちらは渋い、クールな感じ。
ジャズというもの、その本質を表現しているように思いました。
映画全盛の頃の映画の世界に近い、現実逃避できる避難所のようなジャズ。
聴いただけで苦労を経験した(している)大人を想像させる、大人への憧れそのもののジャズ・・・
ちょっとした芝居(寸劇未満のやりとり)が、口直しのようにはさんであるのも新鮮でした。
これまた、今にぴったりな感じ。
ジャズ風味の「感情の幕の内弁当、おせち」と言いたくなる、渋くクールな大人の華やぎに視界がひらけていくようなレビューです。
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(3)演出家の年代を感じた舞台
第1部の演出を手がけた小柳 奈穂子さん、
実はわたし(本木晋平:1976年3月生まれ)と同年生まれです。
ウィキペディアで見ました。
第2部の演出を手がけた三木 章雄さんは、生年はわかりませんが、
「1971年4月、宝塚歌劇団入団」とあるので、推定1950年前後。
わたし(本木晋平)の父の世代に近い。
見ていると、何というのか、第1部は間やちょっとしたセリフが「分かる」ところが結構多い。
一方、第2部は新鮮というのか、場面転換のテンポ感が「(わたしには)分からない」ところもあったりする。
演出家の年代によるところも大きいのかなと思いました。
もちろんどちらもすごいので、これはわたしの好みや感性の問題だと思います。
「分からない」ところがある方が面白いのも事実ですし。
素晴らしい舞台をありがとうございました。
ーーーおみやげーーー
「クアトロえびチーズ」を買ってみました。
大人女子の御用達だそうです。
観劇の記念に、ぜひ。
ーーーお昼とデザートーーー
お昼はロースかつ定食
デザートはコメダ珈琲店の「豆乳オーレ」と「純栗ぃむ(ほとんどモンブランなケーキ)」。
ごちそうさまでした。