本の紹介です。
(鴻巣友季子著、ちくま文庫、2021)
翻訳家の翻訳とはどのようなものか、例を一つ。
ベトナム戦争に出征する二十歳ぐらいの兄に、十五歳くらいの弟が別れの言葉を叫んだ。
I love you brother, I love you brother,
↓
「兄貴、死ぬんじゃないぞ。」
↑
この訳、天才的!
わたしなら「兄ちゃん! 兄ちゃん!」でしょうか……
何か翻訳する予定はない、何かを翻訳するつもりもないひとにも読んでほしい名著です。
なぜ言葉を大切にしないといけないか、なぜ言葉に誠実に向き合わなければならないかが書かれているからです。
●これは本当に覚えておいてほしいのですが、自国の言語とか文化を大事にするということと、外国語を身につけるということはまったく矛盾しないということです。★p173-4
●他言語を身につけるというのは、新しい視点をもつことでもあります。★p176
●なにか違和感を残すものは、あなたにとって意外と大事なものかもしれません。p187
●うまく転んだずれというのは、往々にしてなにか真実を含んでいます。 p197
●まずは、自然な訳より的確な訳を目指してください。p211
おすすめします!