1998年にポルトガル語世界初のノーベル文学賞受賞作家となった
ジョゼ・サラマーゴ(José de Sousa Saramago 1922-2010)
が2008年に書いた、晩年の快作の紹介です。
(ジョゼ・サラマーゴ著、木下眞穂訳、書肆侃侃房、2021)
装幀*成原亜美
各自、自己責任でできることをして対処してくれ。それ以上は何も言えない隊長は、自己責任という万国共通の万能語に頼ることにした、これを口にする者は、人としても社会の一員としても、いかに自分が厚顔な偽善者であるかを示している、貧者に施しを請われて否と断った舌の根も乾かぬうちに、あなたも自分の力でがんばりなさいと言うようなものだ。
p.90
往々にして
事実(現実)を直視できない人間は
嘘をついたり忖度したりしないと
とてもじゃないが生きてはいけない。
まして、平穏には生きられない。
でも、何と言うのか、
しゃーないなー、人間。
っていう、愛すべき物語です。
幸せではないのに、絶望しない。
それは、絶望しないための想像力が人間に備わっているからだ・・・
サラマーゴという老賢者が注ぐ人間への眼差しが感じられ、
肩の力を抜いてもう少しだけ進んでみようかという気にさせてくれる・・・
「象=人生の目的、あるいは人生そのもの」「象使い=人生を生きる人間」の隠喩、
という読み方もできるかもしれませんね。
2008年の作なのに、ルネサンスの古典の香りがする物語です。
おすすめします!