第13章 因幡の白兎(18) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

「一万円って、いくらなんでもそれはないでしょう。新品のロングで、百三十万円もしたんですよ」

「売れないって説明したでしょう。悪く思わないでくださいよ。イヤならいいですよ」

「ひどすぎます。売りません!」

この上、涙を見られたくはなかった。踵を返した。

「どこへ持って行っても、同じかしらね。でも、どうしよう。何とかしないと…」

「三河島へ行ってみるか?」

「三河島?」

「実家のそばだよ。良い思い出がないから寄り付きもしないところだけど、あの辺りは人情味が厚いからね。最後は、故郷だよ。故郷なら、何とかしてくれるかもしれない」

「そう信じましょう。次も私がいきますから」

「わかった、貴女の気の済むようにしよう」

当たって砕けるしか、なかった。

 当たりをつけた店は、コンクリートの三階建てで、およそ質屋のイメージとはかけ離れた堅牢にして豪奢な店だった。折衝も、対面ではなく、会話はすべてインターホン越しであった。そして、予想に反して、声の主は女性だった。

(良かった。女同士ならわかってもらえるかもしれない)。細い、細い光の条を見た思いだった。しかし、ここでも答えは同じであった。とはいえ、今度ばかりは、怒りに任せて引き下がるわけにはいかなかった。息子の笑顔と、ママちゃんと呼ぶ声が鉄の女へと変身させた。

「そこを、何とかお願いします。明後日には、一つ手形をもらえるんです。でも、それまでがどうしてもつながらないんです」

「ご商売なの?」

「はい。でも、業界全体が底冷えで、ずっとお金に追いまくられています」